慢性腎臓病患者の食事療法、タンパク質制限の難しさから臨床研究は極めて困難だった
新潟大学は12月7日、「慢性腎臓病患者における治療用特殊食品(低たんぱく質米)の使用がタンパク質摂取量に与える効果に関する多施設共同無作為化比較試験」を行い、その結果、低たんぱく質ごはんの使用がCKD患者の食事療法における、タンパク質制限のアドヒアランスを向上させるだけでなく、腎障害の程度を示す尿タンパク量を減少させたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科腎研究センター病態栄養学講座の細島康宏特任准教授、蒲澤秀門特任助教、亀田製菓株式会社、サトウ食品株式会社、株式会社バイオテックジャパン、ホリカフーズ株式会社らの研究グループによるもの。研究成果は、「Kidney360」に掲載されている。
末期腎不全に伴う透析患者数は世界的に増加の一途であり、国内でも30万人を越えている。さらに、その予備軍であるCKD患者の数は成人の約8人に1人と推計されており、日本においても新たな国民病という名に値する規模と考えられる。一般的に、CKDの進行は薬物療法を始めとする現状の診療のみでは抑制することが困難なことが多く、近年、CKD患者における食事療法の重要性が見直されてきている。
一方で、CKD患者における食事療法のエビデンスは世界的にみても不十分であり、その構築が早期に望まれているが、特にその中心となるのはタンパク質制限である。しかし、長年にわたり世界的に研究され議論されてきたにも関わらず、タンパク質制限が腎機能低下速度を抑制するか否かについては結論が得られていない。問題点として、これまで行われてきた臨床研究においては、示された「タンパク質摂取量」が遵守されていないものが多く、食事療法の臨床研究が極めて困難であることが挙げられる(日常診療においてもタンパク質制限の遵守は難しい場合が多い)。そこで今回の臨床研究においては、CKD患者において推奨されるタンパク質制限食を遂行する上で、治療用特殊食品(低たんぱく質米・低たんぱく質ごはん)の使用がそのアドヒアランスの向上に有効であるかについて検証を行った。
「低たんぱく質ごはん」使用の有効性を検証、102名対象・24週間の臨床試験で
同大および7関連病院のCKD患者(ステージG3aA2~G4)102名を対象として、24週間、4週毎の栄養指導のみを行う群(非使用群)と、加えて低たんぱく質ごはん(2回/日以上)を使用する群(使用群)に無作為に分け、タンパク質制限(0.7g/kg標準体重/日)を遂行する上での低たんぱく質ごはんの有効性を検討した。タンパク質摂取量の推算には蓄尿検査の結果を用いマロニーの式により算出した。
使用群のタンパク質摂取量および尿タンパク量、非使用群より減少
タンパク質摂取量は低たんぱく質ごはん非使用群(49/51例完遂)において0.99gから0.91/kg標準体重/日、低たんぱく質ごはん使用群(50/51例完遂)では0.99gから0.80/kg標準体重/日に減少した。開始時の摂取量で調整したタンパク質摂取量は、使用群が非使用群に比して24週時点で0.11g/kg標準体重/日減少していた。2群間における尿タンパク量の変化は、24週の時点で非使用群が0.07g/日、使用群は-0.30g/日と明らかに使用群において減少していた。なお、2群における24週時点の腎機能を示すクレアチニンクリアランスに有意差はなかった。
研究グループは、「今後は、より長期の検討における低たんぱく質ごはんを用いた、タンパク質制限が腎機能低下速度を抑制するか否かについての検証が必要と考えられる。そこで、2019年から『慢性腎臓病患者における治療用特殊食品(低たんぱく質米)の使用が腎機能低下速度に与える効果に関する多施設共同無作為化比較試験(RICE2研究)』を開始しており、最終的に100名以上のCKD患者の同意が得られ、現在も研究を継続している」と、述べている。(QLifePro編集部)