保存期CKDなどで野菜・果物摂取を控える指導は妥当?

新潟大学は2月21日、CKDのない人・保存期慢性腎臓病()・血液透析患者で、野菜や果物の摂取頻度と死亡リスクとの関連が異なるのかについて、コホート研究で調べた結果を発表した。
この研究は、同大大学院医歯学総合研究科臓器連関学講座の若杉三奈子特任准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Renal Nutrition」に掲載されている。

画像: 画像はリリースより

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腎機能が正常の人では、野菜や果物の摂取が少ないと、摂取が多い人よりも死亡リスクが高いことが多くの疫学研究で示されている。一方、腎機能が低下した保存期CKDや血液透析患者でも同様かは不明だった。野菜や果物にはカリウムが多く含まれているものが多く、高カリウム血症をきたす恐れから、腎機能が低下した保存期CKDや血液透析患者では野菜や果物の摂取を控える指導がなされることがある。近年、欧米からの報告で、保存期CKDや血液透析患者でも野菜や果物の摂取が少ないと死亡リスクが高いことや、食事中のカリウム摂取量と血清カリウム値に関連がないことが報告された。これまで、科学的根拠が乏しいにもかかわらず伝統的に行われてきた、保存期CKDや血液透析患者での野菜や果物の摂取制限といった指導が疑問視されてきている。欧米と日本では食習慣が大きく異なることから、日本人での検討が必要と考えられ、今回の研究を実施した。

佐渡プロジェクト参加者2,006人対象に解析

2008年から新潟大学とJA新潟厚生連佐渡総合病院が共同で行っているコホート研究「佐渡プロジェクト(PROject in Sado for Total health、PROST)」の参加者のうち、登録時に腎機能の情報と野菜・果物の摂取調査結果があり、腹膜透析を受けていない人2,006人(平均年齢69歳、男性55%)を解析。野菜や果物の摂取頻度は、自記式質問票を用いて調査した。毎日食べる人を基準として、時々食べる人、ほとんど食べない人の3群に分け、死亡のリスクを計算。分析にあたっては、性別、年齢、BMI(Body mass index)、喫煙状況、、糖尿病、脳卒中、心筋梗塞の有無、CKD状態(CKDのない人・保存期CKD・)、高カリウム血症の有無を統計学的に調整した。さらに、CKD状態でグループ分けして、同様の解析も行った。

CKDステージ別の検討では、野菜・果物の摂取頻度によらず血清カリウム値は同程度

解析対象者2,006人のうち、902人(45%)が保存期CKD、131人(7%)が血液透析患者だった。CKDのない人では、約半数が野菜・果物を毎日摂取していたが、腎機能が低下するほど、毎日摂取している人の割合は低くなり、血液透析患者で毎日摂取していたのは28%だった。野菜と果物を別々に検討したところ、果物の摂取頻度は腎機能が低下しても不変で、血液透析患者でも88%が毎日果物を摂取していた。CKDステージ別で検討すると、野菜・果物の摂取頻度によらず、血清カリウム値は同程度だった。

野菜・果物を毎日摂取の人に比べほとんど食べない人は死亡リスク1.6倍、CKDも同様の関連

平均5.7年間の追跡調査中に、561人が死亡。野菜・果物の摂取頻度が少ないほど、死亡リスクは増大し、毎日摂取していた人に比べて、時々食べる人は1.25倍(95%信頼区間1.04-1.52)、ほとんど食べない人は1.60倍(95%信頼区間1.23-2.08)だった。CKD状態別に検討を行ったところ、保存期CKDや血液透析の患者群では人数が少なく有意ではなかったが、同様の関連が見られたという。

保存期CKD・血液透析患者群は人数少、今後大人数の研究での検証を

今回のコホート研究によって、日本の保存期CKDおよび血液透析患者においても、CKDのない人と同様に、野菜や果物の摂取が少ないと死亡リスクが高いことが示唆された。保存期CKDや血液透析の患者群では人数が少なかったため、大人数の研究での検証が必要だが、腎機能が低下した保存期CKDや血液透析患者でも、野菜や果物の摂取制限を指導することは適切ではない可能性がある。野菜や果物には、カリウム以外にもさまざまなミネラルやビタミン、食物繊維などが含まれ、それらが好ましい影響を与えている可能性があるとしている。

また、CKDステージ別での検討で、野菜・果物の摂取頻度と血清カリウム値に関連を認めなかった。今回の研究では、野菜や果物の摂取頻度のみの調査であり、野菜や果物の種類や摂取量を調べていない。そのため、毎日食べている人では、量を加減したり、カリウムが比較的少ない野菜や果物を選んだり、あるいは、ゆでこぼしや水さらしなどの工夫を行い、関連がなかった可能性がある。いずれにせよ、今回の結果から、腎機能が低下した保存期CKDや血液透析患者であっても、何らかの工夫をすることで、野菜や果物を毎日摂取することは可能であることを示唆していると考えられる。

PROSTでは、各臓器が相互に連関する「臓器連関」の視点から加齢性疾患の研究を進めており、これまでもさまざまな研究を発表してきた。今後も、臓器連関の視点から加齢性疾患の研究を進め、日本の超高齢化社会に役立つ科学的知見を構築していく予定だ、と研究グループは述べている。(

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