多施設共同研究でMCIバイオマーカーをアミノ酸プロファイルより探索
新潟大学は2月7日、軽度認知障害の新たな血液バイオマーカーを開発したことを発表した。この研究は、同大脳研究所遺伝子機能解析学分野の春日健作助教、池内健教授、同研究所脳神経内科学分野の徳武孝允助教らの研究グループと、全国18の医療機関・施設と味の素株式会社との共同研究によるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。
軽度認知障害(MCI:mild cognitive impairment)は客観的な認知機能低下は認めるものの、日常生活は概ね自立しており、認知症には至っていない状態を指す。厚生労働省の調査によると、日本のMCIは約400万人と推定されている(平成12年)。MCIは認知症に移行する高リスク群として知られており、年間1割程度のMCIが認知症に移行すると報告されている。MCIの段階で早期発見し、生活習慣を改める等の予防が重要と考えられている。そこで今回、多施設共同研究「血漿アミノ酸プロファイルによる軽度認知障害およびアルツハイマー型認知症の発症予測に関する臨床研究」が行われた。
MCIではアルブミンと必須アミノ酸を中心とした複数のアミノ酸が有意に低下
研究グループは、血液中のアミノ酸プロファイルを測定し、MCIの新規バイオマーカーを開発した。認知機能正常者(220人)と比較して、MCI(219人)の人では、アルブミンと必須アミノ酸を中心とした複数のアミノ酸が有意に低下していたことがわかった。必須アミノ酸は主にタンパクなどの食事から摂取するため、これらの所見は、MCIの段階で、タンパク質摂取不足等の栄養状態の変調が生じていることが示唆された。
認知症に移行する因子をアミノ酸などの栄養指標から予測することを目指す
同研究は、栄養学的な面に着目し、MCIバイオマーカーにアミノ酸プロファイルを応用した初めての成果になるという。「タンパク質等の栄養状態が軽度認知障害の発症と関連していることが示唆された。研究は3年間の追跡研究が継続されており、軽度認知障害から認知症に移行する因子をアミノ酸などの栄養指標から予測することを目指す」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)