特に心疾患の症状がない中年の人でも、実は心筋梗塞の発症リスクが高い場合があるようだ。無症候性の冠動脈硬化を有する人では、予期せぬ心筋梗塞の発症リスクが大幅に上昇することが新たな研究で明らかになった。コペンハーゲン大学病院(デンマーク)の循環器専門医Klaus Fuglsang Kofoed氏らによるこの研究は、「Annals of Internal Medicine」に3月28日掲載された。

動脈の壁が肥厚したり硬くなったりすることを動脈硬化という。心臓に血液を供給する冠動脈に生じた動脈硬化は、経時的に悪化し、胸の激しい痛みを伴う狭心症や、心筋梗塞を引き起こすことがある。Fuglsang Kofoed氏は、「主に高齢者に見られる無症候性の冠動脈硬化は循環器系の変化を意味するが、一部の人では、それが心筋梗塞や早期死亡の原因となることがある。重要なのは、多くの人がこの動脈硬化を抱えていても、臨床的に明らかな心疾患を発症しないということだ」と説明する。

今回の研究では、既知の虚血性心疾患がない40歳以上の9,533人を対象に冠動脈CTを実施し、冠動脈の状態を調べた。冠動脈硬化については、動脈内径の閉塞の程度(狭窄率が50%以上の場合を閉塞性の冠動脈硬化とみなす)と動脈硬化が認められる範囲(冠動脈樹の3分の1以上に及ぶ場合を広範性の冠動脈硬化とみなす)を基準に調べた。

その結果、5,114人(54%)には無症候性の冠動脈硬化が認められなかったが、3,483人(36%)には非閉塞性の冠動脈硬化、936人(10%)には閉塞性の冠動脈硬化が認められた。追跡期間中央値3.5年(範囲0.1〜8.9年)の間に、193人が死亡し、71人が心筋梗塞を発症した。心筋梗塞のリスクは、閉塞性の冠動脈硬化と広範性の冠動脈硬化を持つ人で有意に上昇していた(調整相対リスクはそれぞれ9.19、7.65)。相対リスクが最も高かったのは、閉塞性で広範性の冠動脈硬化を持つ人での12.48であり、閉塞性で非広範性の冠動脈硬化を持つ人での8.28がそれに続いた。

米メンズヘルス・ボストンの循環器専門医であるEvan Appelbaumu氏は、「この研究結果を警鐘と捉えるべきだ」と話す。「例えば、コレステロールは重大な閉塞や狭窄が発生する前に動脈内に蓄積する。心血管疾患のスクリーニングが非常に重要視されているのは、このような蓄積が誰にとっても問題となり得るからだ。心血管疾患のスクリーニングを行うことで、問題を早期に検出し、命を救う予防的な治療を開始することができる」と説明している。

米マウントサイナイ・ヘルスシステムの循環器専門医であるMatthew Tomey氏もAppelbaumu氏に同意を示し、「臨床的に確認される心筋梗塞や閉塞した血管に起因する胸痛、脳梗塞は、氷山の一角に過ぎない」と指摘。「動脈硬化の症状は、血栓による突然の血流阻害やプラークによる動脈の進行的な狭窄率が、典型的には70%以上になるまで現れないことがある。つまり、心臓の3本の主要な動脈の狭窄率が69%だったとしても、症状が現れていなければ、普段通り出歩いている可能性があるということだ」と述べる。

Tomey氏によると、こうした人では、長年にわたり心疾患のリスク評価のために使われている心臓ストレステストでは正常と判定される可能性があるという。この点を踏まえた上で同氏は、「表面上は見えないものを確認できるCT検査で、無症候段階にある動脈硬化を見つけ出す必要がある」と話す。そして、「自分の心疾患リスクを最もよく評価できる方法について担当医に相談するとよい」とアドバイスしている。(HealthDay News 2023年3月28日)

https://consumer.healthday.com/heart-disease-2659636350.html

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