成人の4人に1人が脂肪肝、MASHへの進行メカニズムは未解明だった
日本大学は12月8日、脂肪肝から代謝機能障害関連脂肪性肝炎(以下、MASH)へと病気が進行するメカニズムを明らかにしたと発表した。この研究は、同大生物資源科学部バイオサイエンス学科の細野崇准教授、関泰一郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Biological Chemistry」にオンライン掲載されている。

画像はリリースより
日本では、食生活の欧米化や運動不足、肥満や糖尿病といったメタボリックシンドロームの増加に伴い、脂肪肝とその進展形であるMASHがきわめて身近な肝疾患になっている。日本人の成人の少なくとも4人に1人が脂肪肝を有すると推計され、男性では約3割、女性でも1~2割がMASLDに該当すると報告されており、世界的に見ても脂肪肝・MASLDが非常に多い国となっている。脂肪肝の原因は、飲酒による「アルコール性脂肪肝」と、飲酒以外の原因による「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)」の2つに大別される。脂肪肝から炎症や肝線維化を伴ったMASHへ進行する過程には、脂肪の蓄積に伴う慢性的な炎症と、それに続く肝星細胞の活性化が関与すると考えられているが、単純性脂肪肝のままとどまる場合も存在しており、どのような要因やメカニズムによって脂肪肝からMASHに進行するのかはこれまで明らかではなかった。
メチオニン代謝異常がヒストンのメチル化修飾変化を介して肝線維化に関与
研究グループはまず、脂肪肝から肝線維化が惹起されるコリン欠乏メチオニン減量高脂肪食を用いたMASHモデルマウスにおいて、肝臓組織の経時的なサンプリングを行い、メタボロミクス解析(代謝物の網羅的解析)とトランスクリプトーム解析(遺伝子発現の網羅的解析)を実施した。その結果、メチオニンの代謝産物であるS-アデノシルメチオニン(SAM)が増加し、S-アデノシルホモシステイン(SAH)が減少する、すなわちSAM/SAH比が上昇することを見出した。
実際にSAM合成酵素のメチオニンアデノシルトランスフェラーゼ阻害剤であるシクロロイシンをMASHモデルマウスに投与すると、肝臓におけるSAM/SAH比の上昇が抑えられ、脂肪肝や肝線維化が改善した。さらに、肝臓においてヒストンのメチル化修飾パターンが変化しており、エピジェネティックな制御によって肝線維化が引き起こされることが明らかになった。
これらの変化は、コリン欠乏メチオニン減量高脂肪食とは異なるフルクトース含有高コレステロール食をレプチン欠損マウスに与える別のMASHモデルマウスにおいても認められ、同様にSAM/SAH比の上昇とヒストンのメチル化修飾の変化が観察された。
以上より、メチオニン代謝異常に伴う肝臓のSAM/SAH比の上昇が、ヒストンのメチル化修飾変化を介して脂肪肝から肝線維化への進行に関与することがはじめて明らかとなった。
食事・栄養介入により、新たな治療標的の提案につながると期待
日本には、現在、2000万人以上のMASLD患者がいると推計されており、そのうち約25%が炎症を伴うMASHに進行すると推定されている。日本ではMASHおよびMASLDの病態に特異的に効果を有する治療薬は承認されておらず、併存疾患の治療と生活習慣の改善が治療の中心となっている。
「今後は、今回見出した脂肪肝からMASHへの進行メカニズムが、ヒトのMASH病態形成にどの程度関与するかについて検討する必要があるが、今回の研究成果を踏まえ、メチオニン代謝を正常化する食事・栄養介入により、脂肪肝からMASHの進行を抑えるための新たな治療標的の提案につながることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)
