米食品医薬品局(FDA)は2022年12月16日、高リスク膀胱がんの新たな治療選択肢としてAdstiladrin(一般名nadofaragene firadenovec-vncg)と呼ばれる遺伝子治療薬を承認した。適応は、標準治療であるBCG(Bacillus Calmette-Guérin)が奏効しない、上皮がん(CIS)を有する高リスク筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC)の成人患者で、乳頭状腫瘍の有無は問わない。ただしFDAは、免疫抑制や免疫不全の患者にはAdstiladrinを投与すべきではないとしている。
新たに診断される膀胱がんの約75~80%は、がんが膀胱の内層を越えるが筋層までは浸潤していないNMIBCである。NMIBCの約30~80%は再発して、浸潤がんや転移がんになるリスクがある。高リスクNMIBCに対する一般的な治療法は、腫瘍を切除し、主に結核予防のためのワクチンとして使用されているBCGにより再発リスクの低減を図るというもの。しかし、BCGが奏効しない患者に対しては、これまで効果的な治療選択肢がほとんどなかった。米疾病対策センター(CDC)によると、米国では年間に男性約5万7,000人、女性約1万8,000人が膀胱がんと診断され、男性約1万2,000人、女性約4,700人が同がんにより死亡している。
Adstiladrinは、157人の高リスクNMIBC患者を対象とした多施設共同臨床試験の結果に基づいて承認された。157人のうち98人がBCG不応性のCIS(乳頭状腫瘍の有無は問わない)を有しており、Adstiladrin投与の効果が検討された。投与は、3カ月ごとに1回、最長12カ月間にわたって行われた。ただし、この間に許容できない毒性が認められたか高悪性度のNMIBCが再発した場合には中止された。
その結果、51%で完全奏効(膀胱鏡検査、生検組織診断、尿検査で認められるがんの兆候が全て消失)が確認された。奏効期間の中央値は9.7カ月で、奏効を認めた患者の約46%に1年以上の完全寛解が認められた。Adstiladrinの有害反応として特によく生じたのは、膀胱分泌物、疲労、膀胱痙攣、尿意ひっ迫、血尿、悪寒、発熱、および排尿痛であった。
FDA生物製剤評価研究センター(CBER)のPeter Marks氏は、「今回の承認により医療従事者は、BCG不応性の高リスクNMIBC患者に対する革新的な治療選択肢を得ることになった。この措置は、必要性が非常に高い領域に対応したものである。FDAは引き続き、安全かつ有効ながんの治療法の開発と承認に尽力していく」と述べている。(HealthDay News 2022年12月19日)
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