28遺伝性網膜疾患からなる1,210家系対象に、全エクソン配列解析
東京医療センターは11月14日、1,210遺伝性網膜疾患患者家系の全エクソン配列解析を行い、日本人の患者で多く見られる疾患原因遺伝子と変異を明らかにしたと発表した。この研究は、同医療センター臨床研究センター分子細胞生物学研究部の岩田岳部長、須賀晶子主任研究員、東京大学院農学生命科学研究科の吉武和敏助教、Japan Eye Genetics Consortium(JEGC)に参加する国内の大学病院や眼科施設の共同研究グループによるもの。研究成果は、「Human Mutation」に掲載されている。
遺伝性網膜疾患は、遺伝子の異常が原因で網膜組織の変性や視細胞の機能低下をきたす病気の総称。網膜色素変性や黄斑ジストロフィーを含む。これまでに250以上の原因遺伝子が報告されており、そのいくつかに対しては遺伝子治療が試験的に行われている。一方で、原因遺伝子の解明と大規模な遺伝学的研究は欧米を中心に進められてきたこともあり、これらの研究で多くの患者に見られる原因遺伝子と日本人の患者で多く見られる原因遺伝子には違いがあった。
JEGCでは、これまでにオカルト黄斑ジストロフィーや網膜色素変性など個別の疾患について遺伝子解析の結果を発表してきた。しかし、遺伝性網膜疾患として統合した場合にも日本人に特徴的な傾向が見られるのかについて、検討されていなかった。
今回研究グループは、JEGCの22施設で収集した28の遺伝性網膜疾患からなる1,210家系を対象に、全エクソン配列解析を用いて原因遺伝子と変異を同定した。
448家系で原因遺伝子と変異を特定、変異最多はEYS、2番目はRP1
研究の結果、これまでの発表も含めて、448家系(37%)について原因遺伝子と変異を特定した。同コホート全体では、網膜色素変性の原因遺伝子として知られるEYSが最も多く(82家系)検出され、2番目にRP1が検出された(30家系)。EYSを原因遺伝子とする患者の中では、日本人創始者変異として知られる2つの変異(p.S1653Kfs*2、p.Y2935X)と高頻度変異(p.G843E)のどれかを持つ人が88%を占めていた。
一方で、RP1を原因遺伝子とする患者の中では黄斑ジストロフィーと診断されたケース(14家系)が最も多く、その86%は日本人の高頻度変異(p.R1933X)とRP1のエクソン4内のAlu配列挿入を複合ヘテロ形式で持っていた。
日本人を含む東アジア人はその他の地域の人々に比べて、上記の変異を高い頻度で持っており、遺伝的背景が疾患原因遺伝子の頻度の違いに影響していることが示唆された、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)