健康のためには「1日1万歩」歩くと良いとよく言われるが、それよりやや少ない歩数でも、健康の維持・増進につながる可能性が報告された。米ヴァンダービルト大学のHiral Master氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Medicine」に10月10日掲載された。

報告された新たな研究では、6,000人以上の中高年米国人を最長7年間にわたって追跡。1日の歩数が8,000~9,000歩以上の人は、肥満、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病などの発症が少ないことが明らかになった。なお、歩幅にもよるが、1日8,000~9,000歩は、約4マイル(6.4km)の歩行に相当する。

この報告について、研究には関与していない米ジョン・オクスナー心臓血管研究所のChip Lavie氏は、「これは単純明快な公式を示している。歩くことの目標が体重管理である場合、歩数が多ければ多いほど、より多くのカロリーを消費する。一般的に1マイル(約1.6km)の歩行で100kcal消費すると言われている」と述べている。また同氏は、「身体活動量をさらに高めると、食事摂取量が増えてしまう可能性があるが、そうであっても、より活動的であることのメリットは少なくない」として、1日8,000~9,000歩までで良いと解釈することに注意を促している。

Master氏らの研究では、米国で行われている「All of Us Research Program(AoURP)」という研究のデータが解析に用いられた。AoURPには、ウェアラブルデバイスにより把握した身体活動量や、受療行動・検査の結果、遺伝子情報など、個人の健康に関する詳細なデータが記録されている。この中から、活動量計の記録のある6,042人〔年齢中央値56.7歳(四分位範囲41.5~67.6)、女性73%、BMI中央値28.1〕を抽出して解析。観察期間中央値4.0年(同2.2~5.6)での平均歩数は1日7,731.3歩だった。

解析の結果、1日平均8,200歩以上歩く人は、肥満になる可能性が低く、胃食道逆流症や大うつ病と診断される頻度も低かった。また、歩数がより多い人の方が、健康状態がより良好だった。例えば、1日の歩数の多い上位25%の人(1日1万1,000歩近く歩く人)は、下位25%の人(1日6,000歩前後の人)に比べて、肥満は4割強少なく、胃食道逆流症は約3割少なかった。過体重の人が毎日の歩数を6,000歩から1万1,000歩に増やした場合、肥満になる確率が64%低下する可能性も示された。

一方、糖尿病と高血圧に関しては、効果が頭打ちになることが分かった。つまり、1日の歩数が8,000~9,000歩までは、歩数が多いほどリスクが低下するものの、それ以上歩いてもリスクは変わらないという結果だった。ただしLavie氏は、「本研究のみを根拠に1日9,000歩でメリットは最大化すると考えるのは早計」と述べている。米ナショナル・ジューイッシュ・ヘルスのAndrew Freeman氏も、健康維持のための歩行目標の「魔法の数字」などはないとの考え方に同意している。その一つの理由として、「車が登場する前、人々は毎日ふつうに10マイル(約16km)も歩いていた」と同氏は語る。また、運動は健康維持のための1要素に過ぎず、植物性食品ベースの食事、十分な睡眠、他者との社会的なつながりなどの重要性を強調している。

とはいえ、Lavie氏、Freeman氏ともに、本研究の結果が示しているメッセージの中核を成す、「健康のために体を動かすべきだ」という点については、強く同意している。なお、本研究でも用いられたウェアラブル健康デバイスについてFreeman氏は、「健康増進のために必須とはいえないが、それによってモチベーションが維持されるのであれば素晴らしいことだ」と評している。(HealthDay News 2022年10月17日)

https://consumer.healthday.com/walking-and-heart-health-2658440021.html

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