毎朝7時前に起床し、1日を通して活動的に過ごす習慣のある65歳以上の人は、1日の活動パターンがきっちりと決まっていない人に比べて、認知機能検査の成績が良く、抑うつ症状を有する可能性も低いことが明らかになった。米ピッツバーグ大学精神病学分野のStephen Smagula氏らが実施したこの研究の詳細は、「JAMA Psychiatry」に8月31日掲載された。
この研究は、米国全国健康栄養調査(NHANES)の2011年から2014年の縦断データを解析したもの。目的は、米国の高齢者に典型的な1日の活動パターンというものがあるのかどうか、また、それらのパターンが認知機能やメンタルヘルスに関連するのかどうかを調べることであった。対象は65歳以上の1,800人(平均年齢72.9歳、女性57%)で、平均6.9日にわたって手首に付けた活動量計で活動量が記録されていた。対象者はさらに、質問票を通して抑うつ症状と認知機能についても評価されていた。
その結果、典型的な1日の活動パターンとして4つのパターンに分類できることが明らかになった。最も多かったのは(37.6%)、毎日、午前7時前に起床し、1日当たり15時間、同じ活動パターンで過ごしている群(クラスター1)。次に多かったのは(32.6%)、クラスター1と同様に同じ活動パターンで1日を過ごしているが、活動時間がクラスター1よりも短い(13.4時間)群(クラスター2)。残る2パターンはどちらも活動パターンが規則正しくない群で、1つ(9.8%)は1日当たりの活動時間が11.8時間と最も短い群(クラスター3)、最後の1つは(20.0%)は就寝時間が最も遅い群(クラスター4)である。
抑うつ症状があると評価された対象者の割合は、クラスター1で3.5%、クラスター2で4.7%、クラスター3で7.5%、クラスター4で9.0%であった。抑うつ症状を有する確率はクラスター1に比べてクラスター3とクラスター4で有意に高く、オッズ比は、クラスター3で2.34、クラスター4で2.91であった。
一方、認知機能については、少なくとも軽度認知障害を有すると判定された対象者の割合は、クラスター1で7.2%、クラスター2で12.0%、クラスター3で21.0%、クラスター4で18.0%であった。軽度認知障害を有する確率は、クラスター1と比べてそれ以外の3クラスターのいずれでも有意に高く、オッズ比はクラスター2で1.84、クラスター3で3.36、クラスター4で2.76であった。
こうした結果を受けてSmagula氏は、「早起きをして1日を活動的に過ごすという習慣には、高齢者に対して何らかの保護作用があるようだ」と話す。そして、「今回の研究結果で素晴らしいのは、活動パターンというものは、自分でコントロールできる点だ。これは、自分で意図的に日々の習慣を変えることで、健康や精神状態を向上させることができる可能性を意味する」と付け加えている。
研究グループは、「だからといって、高齢者は四六時中、動き回っていなければならないということではない」とする。Smagula氏によると、活動とは幅広い意味を包含する言葉であり、身体的な活動だけでなく、精神的、社会的な活動も含まれる。つまり、用事をこなしたり、散歩をしたり、孫とゲームをしたり、友人と過ごしたりなどの全てが「活動」の一部ということだ。
この研究には関与していない、米カリフォルニア大学サンディエゴ校老年学分野のIan Neel氏は、「この研究は関連を示しただけで、因果関係を明らかにしたわけではない」と指摘。その上で同氏は、「とはいえ、高齢者が活動的に過ごし、周囲の世界と関わりを持ち続けることでベネフィットを得られるのは明らかだ。私自身も自分の患者に常に身体活動を勧めている」と話す。
Smagula氏とNeel氏は、「座位時間の長い高齢者は、現実的な目標を設定すべきた。例えば、まずは10分間歩くという目標を決め、それが達成できれば徐々に歩く時間を30分にまで伸ばすという具合だ。また、規則正しい睡眠スケジュールを立て、それを守ることも大切だ。たとえ退職しても早起きを続け、秩序だった日々を過ごせるようなルーチンを見つけるべきだ」と助言している。(HealthDay News 2022年9月16日)
Copyright © 2022 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock