欧米・日本で報告が増加するGAPPS、原因遺伝子は判明したが発がんの詳細は未解明

熊本大学は10月28日、Gastric adenocarcinoma and proximal polyposis of the stomach(GAPPS)と呼ばれる遺伝性胃がんについて、RNAシークエンスおよび全エクソームシークエンス(WES)を用い、GAPPSの発がんに関与する遺伝子変異を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院生命科学研究部消化器外科学の岩槻政晃教授、松本千尋医員、九州大学別府病院外科の三森功士教授、東京大学医科学研究所附属ヒトゲノム解析センターゲノム医科学分野の柴田龍弘教授、新井田厚司講師、高橋数冴助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」に掲載されている。

画像: 画像はリリースより

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GAPPSは、胃体部から胃底部に限局して多数の胃底腺ポリープ(Fundic gland polyps:FGP)を形成し、そこから発がんを来す遺伝性腫瘍症候群である。2012年に初めて報告されて以降、欧米および日本からの報告が増加している。2016年には、APCプロモーター1B領域の点変異が原因遺伝子変異として同定されたが、正常胃粘膜からポリープ、さらにはがんへの進展における遺伝子変異の獲得や経路活性化の詳細は未解明であり、その発がんメカニズムは不明だった。同大消化器外科では2015年に1例目を経験し、これまでに6家系11人の治療経験を有している。これらの貴重な臨床サンプルはすべて保存しており、今回の研究では網羅的な遺伝子解析を行った。

GAPPS患者7人から54検体を取得、発がんに関わる遺伝子変異・発現変化を解析

この研究は、GAPPSにおける腫瘍進展過程に関わる遺伝子変異と発現変化を明らかにすることを目的として実施した。熊本大学病院で診断されたGAPPS患者7人(3家系)から、正常胃粘膜・ポリープ・がんの計54検体を取得し、WESおよびRNAシークエンスを行い、GAPPSの発がんに関与する遺伝子変異および発現の変化を解析した。

がん特異的なKRAS変異と関連シグナル活性化を確認、GAPPS独自の発がん経路と示唆

WESによる変異解析の結果、ポリープの53.8%、がんの78.6%にAPCの体細胞変異が認められた。さらに、がんには特異的にKRAS変異が起きていることが明らかとなった。これらのAPCおよびKRASの変異は、症例間のみならず同一症例内の異なるがんにも認められ、GAPPSの発がんに関与している可能性が示唆された。また、RNAによる発現解析の結果、KRAS関連シグナルの有意な活性化ががん特異的に認められ、一般的な胃がんとの比較でも、KRAS関連経路がGAPPSのがんに特異的な活性経路であることが確認された。

バイオマーカーのほか、ctDNAを用いた早期診断・治療応用にもつながると期待

同研究は、疾患概念が普及し、症例が増えているGAPPSの発がん過程におけるAPCおよびKRASの共変異の意義を明らかにし、KRAS変異が有望なバイオマーカーとなる可能性を示した。「この成果から、ctDNAを用いた早期診断や治療方針への応用が期待される」と、研究グループは述べている。(

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