特効薬がない肝線維症治療、活性型肝星細胞の制御が課題
大阪公立大学は10月16日、植物のヘンナに含有するLawsoneに肝線維症を治療する作用があることを発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の松原勤准教授と大黒敦子研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Biomedicine & Pharmacotherapy」にオンライン掲載されている。
画像はリリースより
肝線維化は慢性的な肝疾患に伴って起こる肝臓の病態で、肝硬変や肝がんの発症につながる。肝硬変や肝がんは最悪の場合、死に至る疾患のため、肝線維症の治療薬開発に焦点を当てた研究が多く行われている。しかし、肝線維症は直接的な治療法がなく、治療満足度、薬剤貢献度ともに低い疾患である。そのため肝線維症に対する特効薬の開発が求められている。肝線維症は、肝臓に存在する肝星細胞が活性化型に変化し、過剰な線維を産生することが要因とされ、活性型肝星細胞を制御することが治療法の一つと考えられている。
独自スクリーニング系で肝星細胞活性化阻害物質を同定
研究グループは、活性型肝星細胞に直接作用して、線維成分であるI型コラーゲンの発現を抑制する物質を探索するため、I型コラーゲンの発現制御に基づいた薬物スクリーニング系を開発した。この薬物スクリーニング系を用いて探索したところ、2-Hydroxy-1,4-naphthoquinoneが肝星細胞活性化阻害物質として同定された。2-Hydroxy-1,4-naphthoquinoneは、植物のヘンナから得られることから、Lawsoneとも呼ばれている。
肝線維症マウス、Lawsone投与で線維量が減少
研究グループは次にin vivo実験を行い、Lawsoneを肝線維症マウスに投与すると肝臓の線維量が減少することを確認した。この抑制作用は、肝星細胞のYAPタンパク質の作用を抑制することで起きていると推定される。
実用化に向けて、Lawsone特異的DDS開発が課題
今回の研究成果は今後、肝線維症の治療に貢献することが期待される。
「Lawsoneは、肝星細胞の活性化を抑える遺伝子の発現を誘導する強力な肝線維化抑制物質である。一方で、1,4-naphthoquinone誘導体でもあり、ラジカル産生による細胞毒性が危惧される。実用化には活性型肝星細胞へ特異的に輸送できるドラッグデリバリーシステムを開発する必要があり、今後、活性型肝星細胞特異的輸送系の開発を進める予定だ」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

