第3世代EGFR阻害剤、一次治療として多くの国が承認
英アストラゼネカ社は6月11日、切除不能なステージIIIのEGFR変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者を対象としたP3 LAURA試験において、オシメルチニブ(製品名:タグリッソ(R))が、化学放射線療法(CRT)後の治療としてプラセボと比較し、無増悪生存期間(PFS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善を示したことを発表した。この試験は、米国アトランタのエモリー大学ウインシップがん研究所のエグゼクティブディレクターのSuresh Ramalingam氏(治験責任医師)ら、米国、欧州、南米、アジアを含む15か国以上が参加した国際共同治験。成果は、2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会のプレナリーセッションで発表され、同時に「The New England Journal of Medicine」誌にも掲載されている。
欧米ではおよそ10~15%、アジアでは30~40%のNSCLC患者がEGFR遺伝子変異を有して(EGFRm)いる。EGFRm NSCLC患者は特にがん細胞の成長を促す細胞シグナル伝達経路をブロックするEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)治療への感受性が高くなる。
タグリッソは第3世代不可逆的EGFR阻害剤であり、中枢神経系転移に対するものを含め、NSCLCにおける臨床的有効性が実証されている。同薬40mgおよび80mgの1日1回経口錠剤は、世界中で80万人近い患者の治療に使用されている。米国、欧州、中国および日本を含む100か国以上で単剤療法として承認されている。承認された適応には、局所進行または転移性EGFRm NSCLC患者の一次治療、局所進行または転移性EGFR T790M変異陽性NSCLC患者、および早期EGFRm NSCLC患者の補助療法が含まれる。タグリッソと化学療法の併用療法は、局所進行または転移性EGFRm NSCLC患者の一次治療薬として、米国および他の数か国でも承認されている。
対象は、化学放射線療法後に病勢進行がない切除不能なステージIIIのEGFR陽性NSCLC
LAURA試験は、白金製剤ベースの根治的化学放射線療法後に病勢が進行しなかった、切除不能なステージIIIのEGFRm NSCLC患者を対象とした、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、多施設共同、国際共同第Ⅲ相試験。試験には、米国、欧州、南米、アジアを含む15カ国以上の145以上の施設で216人が登録された。参加者には、病勢進行、許容できない毒性、またはその他の中止基準を満たすまで、タグリッソ80mgが1日1回経口錠剤で投与された。病勢進行時には、プラセボ群の患者さんにもタグリッソの投与が認められました。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目は全生存期間(OS)である。
病勢進行または死亡リスク84%低下、PFS中央値はタグリッソ群39.1か月
盲検下での独立中央判定(BICR)で評価された結果、タグリッソはプラセボと比較して病勢進行または死亡のリスクを84%低減させた(ハザード比0.16;95%信頼区間0.10-0.24; p<0.001)。PFS中央値は、プラセボ群では5.6か月であったのに対し、タグリッソ群では39.1か月だった。特筆すべきことに、性別、人種、EGFR遺伝子変異の種類、年齢、喫煙歴、およびCRTの順序など、事前に規定したすべてのサブグループにおいて、臨床的に意義のあるPFSの有益性が認められた。また、今回の解析時点でのOSのデータは、イベント数が不十分ではあったものの、タグリッソ群では良好な傾向が示された。試験は継続中であり、副次評価項目であるOSを引き続き評価する。
安全性については、有害事象(AE)による投与中止率は予想通りであり、既知の安全性プロファイルと一貫していた。グレード3以上のAEは、タグリッソ群の患者の35%に発生したのに対し、プラセボ群では12%だった。
術前補助療法としてのP3試験など多数実施中
タグリッソについて、同社は現在、術前補助療法として第Ⅲ相NeoADAURA試験を実施しており、今年後半に結果が得られる予定としている。また、早期ステージの切除可能な術後補助療法として第3相ADAURA2試験にも取り組んでいる。さらに、第2相SAVANNAH試験、および第2相ORCHARD試験、ならびに経口投与の強力かつ選択性の高いMET TKIであるsavolitinibとタグリッソの併用療法を検討する第3相SAFFRON試験も実施している。(QLifePro編集部)