更年期障害の症状を和らげるためにホルモン補充療法(HRT)を受けている女性は、後年になって認知症発症リスクが高まる可能性があるとする研究結果が報告された。コペンハーゲン大学病院デンマーク認知症研究センター(デンマーク)のNelsan Pourhadi氏らによる研究で、詳細は「The BMJ」に6月28日掲載された。この論文の付随論評を執筆した米メイヨー・クリニックの神経放射線科医であるKejal Kantarci氏は、「女性でのアルツハイマー病の発症率は男性の2倍だ。そのため、女性でのリスクを上昇させる可能性のあるものなら何であれ、研究者たちは強い関心を持つ」と述べている。

この研究では、更年期の女性に対するエストロゲン/プロゲスチン補充療法とあらゆる原因による認知症(以下、認知症)発症との関連が評価された。対象は、デンマークの医療や健康に関する登録データから抽出した、2000年1月1日から2018年12月31日までの間に認知症を発症した女性5,589人(認知症群)と、年齢を一致させた5万5,890人(対照群)。これらの対象者は、2000年1月1日時点で50〜60歳であり、認知症の既往はなく、HRTを受けられない医学的な理由もなかった。

認知症の診断を受ける前に、認知症群では1,782人(31.9%)、対照群では1万6,154人(28.9%)がエストロゲン/プロゲスチン補充療法を受けていた。治療開始の年齢中央値は53歳で、治療期間中央値は認知症群で3.8(四分位範囲1.1〜7.5)年、対照群で3.6(同1.0〜7.1)年だった。

解析の結果、HRT(エストロゲン/プロゲスチン補充療法、全身または膣に対するエストロゲン補充療法、閉経前のプロゲスチン補充療法)を受けたことがない女性に比べて、エストロゲン/プロゲスチン補充療法を受けた女性では、認知症の発症リスクが24%高いことが明らかになった〔ハザード比(HR)1.24、95%信頼区間(CI)1.17〜1.33〕。また、認知症発症のHRは、エストロゲン/プロゲスチン補充療法を受けた期間が1年以下の場合は1.21(95%CI 1.09〜1.35)だったが、12年以上では1.74(同1.45〜2.10)となり、治療期間が長いほどリスクが高いことも判明した。ホルモンの投与法(持続的投与または周期的投与)別に検討すると、認知症発症リスクの上昇の程度は同等だった(持続的投与:HR 1.31、周期的投与:同1.24)。さらに治療開始年齢で分けて見ると、45〜50歳で治療を開始した場合のHRは1.26、51〜60歳の場合のHRは1.21だった。55歳以下で治療を受けた女性に対象を限定した場合でも、リスク上昇が確認された(HR 1.24)。

こうした結果を受けてPourhadi氏は、「更年期のエストロゲン/プロゲスチン補充療法と認知症発症との間の関連は、閉経前後に同治療を短期間受けた女性においてさえも認められ、一貫していた。研究をさらに重ね、エストロゲン/プロゲスチン補充療法と認知症発症が因果関係にあるのかどうかを解明する必要がある」とコメントしている。

一方、Kantarci氏は、今回の研究結果は、過去に実施された少なくとも3件の臨床試験の結果と相反するものであることを指摘。「過去の研究では、閉経への移行期にある55歳未満の女性では、5年にわたってHRTを受けても認知機能が低下することはないことが報告されている」と説明する。ただし、3件の研究のうちの1件では、65歳以上でエストロゲン/プロゲスチン補充療法を受けた女性での認知症の発症リスクは、受けていない女性の2倍になることが示されているという。

Pourhadi氏は、「ホルモン剤の使用期間が長いほど認知症の発症リスクが高かったという結果は、曝露と転帰の因果関係を支持する可能性があるが、一方で、別の要因が影響を及ぼしていることも考えられる」と述べる。そして、「HRTが認知症発症の直接的な原因というよりも、HRTが必要になるような重度の更年期障害を抱える女性は、認知症の発症リスクが高いということなのかもしれない」との見方を示している。(HealthDay News 2023年6月29日)

https://consumer.healthday.com/hrt-2661928136.html

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