さまざまな果実や野菜に含まれているフラボノール類と呼ばれるフラボノイド類の一種をたくさん摂取することで、加齢に伴うフレイル(虚弱)リスクが低下する可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。中でも、リンゴやブラックベリーに豊富に含まれているケルセチンの摂取がフレイルリスクの低下と強い関連を示したという。米ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのSteven Oei氏らによる研究で、「The American Journal of Clinical Nutrition」に4月13日掲載された。
フレイルとは、加齢に伴い身体機能や認知機能に衰えが生じている状態を指す。高齢者の10~15%程度がフレイルを経験すると考えられている。フレイルの状態になると、転倒や骨折、身体障害、入院、死亡のリスクが上昇する。
フレイルを予防するための食事に関する推奨では、通常、タンパク質の摂取に力点が置かれている。しかしOei氏らは、健康に有用な食品は他にもあるはずとの考えのもと、今回の研究で、フラボノイド類の摂取がフレイルの発症に及ぼす影響について検討した。フラボノイド類は、抗酸化作用を持つ植物性食品の代表であるポリフェノール類の一種であり、サブクラスとして、フラボノール類、フラボン類、フラバノン類、アントシアニン類などがある。
対象は、フラミンガム心臓研究(FHS)のデータから抽出した1,701人(平均年齢58.4±8.3歳、女性55.5%)。いずれの対象者も、研究開始時(1998〜2001年)にフレイルは認められなかった。半定量的食物摂取頻度調査により、対象者のフラボノイド類の総摂取量と、そのサブクラスであるフラボノール類、フラボン類、アントシアニン類などの摂取量、およびフラボノール類の代表格であるケルセチンの摂取量を推定した。対象者を平均12.4±0.8年にわたって追跡し、2011〜2014年にフレイルについての再評価を行った。
フレイルの再評価時に、対象者の13.2%(224人)にフレイルが認められた。ロジスティック回帰分析の結果、フラボノイド類の総摂取量とフレイル発症との間に統計学的に有意な関連は認められなかった。しかし、フラボノイド類のサブクラスごとに検討すると、フラボノール類の摂取量が1日当たり10mg増えるごとに、フレイル発症のオッズが20%低下することが示された(オッズ比0.80、95%信頼区間0.67〜0.96)。また、ケルセチンに関しては、1日当たりの摂取量が10mg増加するごとにフレイル発症のオッズは35%低下していた(同0.65、0.48〜0.88)。このようなフレイル発症のオッズの低下は、他のサブクラスでは認められなかった。
こうした結果を受けてOei氏は、「この研究では、1日当たりのフラボノール類の摂取量を10mg増やすごとに、フレイルになる可能性が20%低下することが示された。中サイズのリンゴ1個には約10mgのフラボノール類が含まれているのだから、1日に10mgのフラボノール類の摂取というのは容易に実践できる」と話す。そして、「昔からよく言う『1日1個のリンゴは医者を遠ざける』には、ある程度の真実味があるようだ」と述べている。
Oei氏らの研究グループは、「今後の研究では、フレイルに対するフラボノール類やケルセチンを用いた食事介入の効果に焦点を当てるべきだ。また、研究参加者に多様な人種/民族の人々を含める必要もある」と話している。(HealthDay News 2023年5月23日)
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