血圧が管理目標範囲内にある時間が長いほど、認知症のリスクが低くなる可能性が、新たな研究で示された。収縮期血圧の値で調整してもこの結果は有意であり、血圧を目標範囲内に管理することが、認知症リスクに独立して関連していた。首都医科大学附属北京安鎮病院(中国)のSitong Li氏らが、米国心臓協会(AHA)学術集会(Scientific Sessions 2022、11月5~7日、米シカゴ/バーチャル開催)で報告した。

Li氏は、「この研究によって、血圧が目標範囲にある時間の長さ(time in target range;TTR)は、収縮期血圧の平均値や変動性を超える意味のあることが明らかになった。医療者が各患者のTTRを評価することで認知症ハイリスク者を特定し、個別化した血圧介入につなげることが可能になる」と述べている。

AHAの調査によると米国成人のほぼ半数が高血圧で、そのうち、習慣的な運動と健康的な食事、および薬物治療によって、血圧をコントロールできている人は、約5人に1人に過ぎない。また、コントロールが不十分な高血圧は、認知機能の低下や認知症のリスクの高さと関連していることが、既報研究で示されている。

血圧コントロールの良し悪しは、これまで通常、測定した時点の血圧値によって定義されてきた。だが実際には、血圧は1日を通して変動していて、一時点の測定結果では良し悪しを正確に判定できない。

Li氏らの研究には関与していない、米ワイルコーネル・メディスンのCostantino Iadecola氏によると、血圧コントロールをこれまでとは別の方法で評価する試みが、研究者の間でなされるようになってきたという。「血圧を目標の範囲内にできるだけ長く維持することによって、予後がより良好になる可能性が明らかになりつつある。血圧測定は1回で済ますのではなく、しばらくの間、頻繁に測定してみる必要がある」と同氏は語る。

2021年に「Journal of the American College of Cardiology」に論文掲載された研究では、成人の収縮期血圧のTTRと、心臓発作、心不全の悪化、脳卒中などの主要心血管アウトカムとの関連が調査された。その結果、TTRが長いほどそれらのリスクが低くなることが分かった。一方、収縮期血圧のTTRと認知機能の低下や認知症のリスクとの関係を調べた研究は、今回のLi氏らが発表したものが初めて。

Li氏らは、高血圧患者の血圧管理強化群と標準治療群とで、合併症リスクを比較検討した介入試験(SPRINT研究)の参加者8,415人のデータを分析した。SPRINT研究の管理強化群の目標は収縮期血圧110~130mmHg、標準治療群は120~140mmHgだった。参加者は平均68歳で、研究開始時点で認知機能低下や認知症は認められなかった。中央値5年の追跡の結果、収縮期血圧のTTRが長い人は、認知症の可能性が高いと判定される確率が低かった。具体的には、TTRが31.5%(1標準偏差)増加するごとに、認知症リスクが16%低下するという関連が見られた。

Iadecola氏は、「医療従事者は一般的に、TTRを把握できるほど十分な頻度で診察をしていない。しかし、患者が家庭血圧を測定すれば、TTRの評価に役立つ可能性がある」と述べている。また、Wi-Fiなどを介して、患者が測定したデータを医療チームに送信することも可能になっているという。

「この研究が示していることは、収縮期/拡張期の血圧の値が、高血圧という疾患の全てを物語っているものではないということだ。TTRは、より有意義な指標なのかもしれない」とIadecola氏は語っている。

なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。(American Heart Association News 2022年10月31日)

https://consumer.healthday.com/aha-news-dementia-risk-may-be-tied-to-how-long-blood-pressure-stays-in-target-range-2658573712.html

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Photo Credit: LvNL/iStock via Getty Images

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