各種抗体薬と抗ウイルス薬の感染・増殖阻害能を培養細胞系で比較
東京大学医科学研究所は1月27日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬が、オミクロン株の培養細胞における感染や増殖を阻害するかどうかを解析したと発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らの研究グループが、東京大学、国立感染症研究所、国立国際医療研究センター、米国ウィスコンシン大学との共同研究として行ったもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」のオンライン速報版に掲載されている。
2021年末に新型コロナウイルスの新たな変異株・オミクロン株が出現し、それ以降、同変異株の感染者が世界各国で爆発的に増加している。国内では、カシリビマブ・イムデビマブやソトロビマブなどの抗体薬、あるいはレムデシビルやモルヌピラビルなどの抗ウイルス薬がCOVID-19に対する治療薬として承認を受けている。しかし、これらの治療薬がオミクロン株に対して有効なのかどうか明らかにされていなかった。そこで研究グループは、オミクロン株に対する治療薬の効果を調べた。
抗体薬「チキサゲビマブ・シルガビマブ」「ソトロビマブ」は感染を阻害
はじめに、4種類の抗体薬(バムラニビマブ・エテセビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ、ソトロビマブ)がオミクロン株の培養細胞への感染を阻害するかどうか(中和活性)を調べた。その結果、バムラニビマブ・エテセビマブとカシリビマブ・イムデビマブのオミクロン株に対する中和活性は、著しく低いことがわかった。それに対して、チキサゲビマブ・シルガビマブとソトロビマブは、オミクロン株に対して中和活性を維持していることが判明した。
抗ウイルス薬「レムデシビル」「モルヌピラビル」は増殖を抑制
続いて、オミクロン株に対する2種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル)の効果を解析した。結果、いずれの薬剤も培養細胞におけるオミクロン株の増殖を抑制することがわかった。
研究グループは引き続き、COVID-19治療薬がオミクロン株の増殖を効果的に抑制するかどうかを、COVID-19の動物モデルを用いて検証する予定だとしている。また、「今回の研究を通して得られた成果は、医療現場における適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株のリスク評価など行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となる」と、述べている。(QLifePro編集部)