70歳以上のCML患者で標準量1日100mgを服用すると重篤な副作用

佐賀大学は11月29日、70歳以上の慢性骨髄性白血病()患者では、特効薬であるダサチニブ(製品名:スプリセル)について、標準的な治療量である1日100mgではなく、5分の1の1日20mgで開始し、効果や副作用を見ながら増減していくことで、より有効に、より安全に使用できることを多施設共同臨床試験で証明したと発表した。この研究は、同大医学部血液・呼吸器・腫瘍内科の木村晋也教授、岩手県立中央病院血液内科の村井一範科長ら、全国25の病院からなる臨床試験グループ(DAVLEC)によるもの。研究成果は、「Lancet Haematology」オンライン版に掲載されている。

CMLは難治性の血液がんであり、異常遺伝子BCR-ABLにより発病する。2001年にBCR-ABLを特異的に攻撃するABL阻害剤としてメシル酸イマチニブ(製品名:)が承認されるまで、造血幹細胞移植が成功する以外には完治する治療法がなく、ほとんど全ての患者が数年以内に亡くなっていた。イマチニブの登場によって劇的に予後は改善し、イマチニブを最初からきちんと服用すれば、ほぼ亡くなることがない病気となった。

一方、一部の患者でイマチニブが効かなくなる、あるいは副作用で継続できない患者も存在していた。そこで、より強力な第二世代ABL阻害剤であるダサチニブなどが開発された。その後、CMLと診断後最初からダサチニブを服用した場合、イマチニブより効果が高いことが報告され、CMLの一般的な治療薬となった。

しかし高齢者、特に70歳以上の患者では、標準量の1日100mgを服用すると重篤な副作用が出現することが多く、治療法が確立されていなかった。実臨床では、適宜ダサチニブを減量して高齢のCML患者に使用されてきたが、明確にどこまで減量をしてよいかは不明だった。そこで、高齢CML患者に対するダサチニブの最適な投与量を求めるため、DAVLEC試験が行われた。

1日20mgのダサチニブ治療、12か月後のMMR率は60%、重篤な副作用起こらず

対象は、CMLに対する前治療歴がない患者。ダサチニブを標準量の5分の1(1日20mg)という超少量で経口投与を開始し、その後、治療効果や副作用の発現状況に応じて、この開始用量を増減させた。治療開始後12か月時点でのBCR-ABL遺伝子が治療開始前の0.1%以下になる分子遺伝学的大寛解(MMR)の達成率で効果を評価した。

2016年11月1日~2019年10月30日の間に、52人が1日20mgのダサチニブ治療を受けた。診断時の平均年齢は77.5歳であった。12か月後のMMR率は、31人(60%)、23人(44%)の患者は十分な効果が得られたため、20mgより増量する必要がなかった。標準的な治療法では約20%の患者で認める重篤な好中球減少、血小板減少や胸水は、同試験では認められなかったという。全年齢層を対象とした1日100mgのダサチニブの試験と比較して、DAVLEC試験では、より高い効果で、少ない副作用だった。

1日20mgという超少量での臨床試験は世界初、医療費の削減にも期待

1日20mgという超少量での臨床試験は世界初めてであり、多くの高齢者では1日20mgで開始して良好な結果が得られることが示された。この結果が、日本以外の高齢CML患者でも同じであれば、他国の高齢CML患者も、より効果が高く、より安全に治療が受けられることになり、世界的な治療ガイドラインを塗り替えることが期待される。研究グループは「薬を5分の1にできるということは、安全性だけでなく、患者個人の医療費が減るだけでなく、国民医療費の削減にもつながる」としている。(

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