菌血症1,100例対象、予後予測に関連する因子30個の組み合わせを検証
北海道大学は1月26日、菌血症患者における「抗菌薬治療開始72時間以内の早期治療不応(Early Antibiotic Treatment Failure:EATF)」を予測する新たな臨床スコアモデルを開発したと発表した。この研究は、同大環境健康科学研究教育センターの岩田啓芳特任准教授および日本全国の8病院と3大学からなる多施設共同研究JA-BICA(Japan Bacteremia Inpatient Cohort Association)の研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Hospital Infection」にオンライン掲載されている。

画像はリリースより
菌血症は臨床現場で頻繁に遭遇する重篤な感染症であり、早期の適切な治療介入が求められる。急性期医療においては、長期的な転帰だけではなく、抗菌薬開始後数日以内に起こる短期的な予後悪化を的確に予測することも重要だ。これまで、入院時点や入院後24時間以内に得られる限られた初期情報に基づいて、抗菌薬開始早期に治療不応となる患者を予測するツールは確立されておらず、医師が早期対応の判断に苦慮する状況が続いていた。
そこで今回の研究では、2018~2022年に全国8施設で、JA-BICA後ろ向き入院患者コホートに登録された約1,100例の成人菌血症患者を対象に、既報で有用とされた約30個の変数について、統計モデルを用いて組み合わせを検証した。
「白血球数高値」など5つの指標を特定、EATFを予測する新たなモデルを構築
研究グループは、抗菌薬開始72時間以内に治療が奏効しない患者(EATF)を予測する新たな臨床スコアモデルを開発した。菌血症患者データを解析した結果、入院時から24時間以内に得られる基本的な臨床指標のみで、EATFの予測が可能であることが明らかとなった。
モデルに含まれるのは「白血球数高値」「低アルブミン血症」「閉塞性病変の有無」「救急搬送の利用」「入院24時間後の酸素投与の必要性」の5項目で、いずれも初診時に把握できる簡便な情報である。これらの因子で作成したEATF予測スコアのArea Under the Curve(AUC)は0.66と判別性能は中程度だが、Calibration plotにおいて予測確率と実測値が良好な一致を示した。
簡便かつ迅速にリスク評価が可能、菌血症診療の質向上に期待
同研究でスコアに使用した指標は、全て救急外来・一般病棟で日常的に取得される項目で構成されているため、特別な検査を必要とせず、迅速に利用可能なことが大きな利点だ。このモデルは、菌血症治療に携わる診療医が、治療開始後早期の段階で治療方針変更を検討する際に有用であると考えられる。
「今後は、本臨床予測モデルの外的妥当性の検証を進め、EATF予測モデル研究分野のさらなる発展につなげていく」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)
