SLEの悪化因子「IFN-I」と「自己抗体」を同時に抑える薬は存在しなかった

大阪大学は12月10日、全身性エリテマトーデス(SLE)における2つの病態悪化因子を同時に抑える薬剤を発見したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科呼吸器・免疫内科学教室の熊ノ郷淳総長、高松漂太招へい准教授、平山健寛招へい教員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Arthritis & Rheumatology」に掲載されている。

画像: 画像はリリースより

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SLEは、若年女性に多く発症する原因不明の自己免疫疾患で、多彩な自己抗体の産生を特徴とする。脳、肺、腎臓など重要臓器に障害をきたし、未治療では生命に関わる可能性がある。現在、急性増悪期には高用量のステロイドや免疫抑制剤による治療が行われるが、感染症、骨粗鬆症、糖尿病など重篤な副作用を招くことが多く、患者にとって安全で効果的な新規治療法の開発が望まれている。

SLEの病態形成にはI型インターフェロン(IFN-I)の過剰産生とB細胞の異常な分化・増殖が深く関与していることが知られている。近年、それぞれを標的とした生物学的製剤(IFN-I受容体阻害抗体アニフロルマブ、B細胞活性因子阻害薬ベリムマブなど)が開発され、一部の患者で使用されている。しかし、特に重症の増悪期にはIFN産生とB細胞由来の自己抗体産生が同時に亢進しており、両者を一挙に抑制できる治療戦略はこれまで存在しなかった。

今回の研究では、この課題に対して薬剤スクリーニングを通じて、IFN-Iと自己抗体産生を同時に制御する新たな治療戦略を提示した。

HDAC阻害薬「ボリノスタット」がIFN-I産生とB細胞の形質細胞への分化を抑制

実験では、化合物ライブラリーとIFN-I活性をモニタリングするレポーター細胞を用いたスクリーニングを行い、HDAC阻害薬「ボリノスタット」を同定した。ボリノスタットは、TBK1のリン酸化とIRF3の核移行を抑えることでIFN-Iを低下させる。これにより、形質細胞分化に必須の転写因子(PRDM1/XBP1/IRF4)の発現が減少し、B細胞の形質細胞分化が阻害される。HDAC阻害薬の作用クラスを比較した検討から、ボリノスタットの作用の中心はHDAC6を介したものと考えられ、一部HDAC3阻害の関与も示唆された。

ボリノスタットにより腎炎および生存率が改善、SLEモデルマウスで確認

SAVIおよびNZB/W F1マウスなどのSLEモデルマウスを用いた検証実験では、ボリノスタットはIFN-I関連遺伝子を抑制するとともに自己抗体産生を低下させ、その結果、タンパク尿や腎病理が改善し、生存率が向上した。

以上の結果から、ボリノスタットによるHDAC6阻害は、SLEにおけるI型IFN経路とB細胞分化経路の両方を同時に抑制し、SLEモデル動物の腎炎改善および生存期間の延長に寄与することが明らかになった。

SLEの新しい治療アプローチ、他の自己免疫・炎症性疾患への適用にも期待

今回の研究は、SLE治療における新たなアプローチとして、1つの薬剤でIFN-I産生と自己抗体産生の双方を制御できる可能性を示した。現在承認されているIFN経路阻害薬やB細胞標的薬はそれぞれ単一の経路しか抑えられないが、同研究で効果が示されたボリノスタットはこれら両方の病態因子を同時に抑制できる点で画期的である。

また、ボリノスタットは既に抗がん剤として使用されており、副作用プロファイルも蓄積されているため、SLEへの適応拡大(ドラッグリポジショニング)により従来のステロイド中心の治療に代わる新規治療法となることが期待される。特に、ステロイドの長期大量投与が困難な症例や、現在の治療薬だけでは十分な効果が得られない重症例に対し、ボリノスタットは新たな選択肢となりうる。

「本研究の知見を基に研究が進めば、将来的にSLEのみならずIFN-I過剰産生が関与する他の自己免疫疾患や炎症性疾患に対しても、有効な治療法を提供できる可能性がある」と、研究グループは述べている。(

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