最新の遺伝子治療に関する知見について、長年にわたり遺伝子治療分野を牽引されてきた自治医科大学名誉教授・客員教授 小澤敬也先生のインタビュー記事をご紹介いたします。本インタビューは、遺伝性疾患情報の専門メディア「遺伝性疾患プラス」に掲載されています。
“未来の医療”とされていた遺伝子治療は、確実に実用化のフェーズへと進みつつあります。現在、日本においては、脊髄性筋萎縮症やRPE65変異に伴う遺伝性網膜ジストロフィーを対象とした遺伝子治療が承認されています。また、血液がん領域では、患者さん自身のT細胞を取り出して遺伝子を導入することにより、がん細胞を攻撃する能力を高めた上で体内に戻すCAR-T細胞療法の承認も相次いでいます。さらにパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などを対象とした臨床試験も進行しており、対象疾患の幅は広がりつつあります。
一方、世界に目を向けると、CRISPR-Cas9という遺伝子を切断・編集する技術を用いた治療が注目されており、米国や欧州では鎌状赤血球症やβサラセミアといった血液疾患においてすでに承認されています。そして、さらに精密な編集が可能となる次世代技術として「ベースエディティング」や「プライムエディティング」によるゲノム編集治療へと進展しています。
そのような中、日本国内では制度や製造インフラの整備の遅れ、治療費の高さなどの課題が顕在化してきています。特に遺伝子治療は希少疾患を対象とすることが多く、患者数が少ない事から開発が難しくなる傾向があります。インタビューにおいて、小澤先生は、こうした課題に対し、①国による制度的支援、②開発や製造コストの抑制、③患者会による情報発信の三方向からの取り組みが今後の希少疾患に対する遺伝子治療開発の環境改善につながることを述べられています。また、遺伝子治療の最前線にある知見や課題に加え、遺伝子治療を受ける当事者や家族が知っておくべきポイントについても非常にわかりやすく解説しています。遺伝子治療に関心のある方にとって、学びの多い内容となっています。
ゲノム編集技術の進化や製造コストの低減が進むことで、これまで治療が難しかった疾患にも新たな選択肢が生まれつつあります。今後、遺伝子治療はますます多様な疾患領域への応用が広がり、個別化医療の実現に向けて大きな進展が期待されます。
株式会社QLifeが運営する遺伝性疾患情報の専門メディア「遺伝性疾患プラス」内の専門家インタビュー「【2025最新版】遺伝子治療はどこまで来たか?専門家が語る現状・課題・展望」(2025年7月15日)にて公開されています。

