2型糖尿病予防にヨーグルトが有効、発症減少による医療費削減効果は?

医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)は9月29日、ヨーグルトの摂取量を適量まで増やすことで、日本における2型糖尿病に関連する医療費の削減につながる可能性があることをシミュレーションにより試算したと発表した。この研究は、同研究所と株式会社明治の研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」に掲載されている。

画像: 画像はリリースより

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日本には、糖尿病患者とその予備群が合わせて約2000万人存在する。糖尿病は、心筋梗塞、脳卒中、認知症などのさまざまな疾病のリスクを高め、生活の質を低下させるとともに、医療費を増大させる一因となっている。そのため、適切な対策を実施し、糖尿病の発症を予防することが重要である。糖尿病には、1型糖尿病、2型糖尿病、妊娠糖尿病などがあるが、日本の糖尿病の9割以上が2型糖尿病とされている。2型糖尿病の多くは、遺伝的要因に食生活の乱れや運動不足などの生活習慣が加わって発症する。近年、複数の研究において、ヨーグルトの摂取が2型糖尿病の発症を減少させることが報告されている。そこで今回の研究では、ヨーグルトの摂取量を適量まで増やすことにより医療費に及ぼす影響を、シミュレーションで検証した。

40〜79歳のデータ用い、ヨーグルト摂取量を増やした場合の医療経済効果を試算

今回の研究では、ヨーグルト摂取量の平均値として、国民健康・栄養調査による発酵乳・乳酸菌飲料の値を使用した。発酵乳・乳酸菌飲料とは、プレーンヨーグルト、普通ヨーグルト、ヨーグルトドリンク、乳酸菌飲料(乳製品)、乳酸菌飲料(殺菌乳製品)、非乳製品乳酸菌飲料、低脂肪無糖ヨーグルト、無脂肪無糖ヨーグルトが含まれる。

令和元年国民健康・栄養調査によると、ヨーグルトを含む発酵乳・乳酸菌飲料の平均摂取量は、40〜79歳で24.5〜51.4g/日にとどまっている。その一方で、「食事バランスガイド」では、1日に「2つ分」の牛乳・乳製品の摂取が適量とされており、ヨーグルトで牛乳・乳製品の適量「2つ分」を満たすには、160gとなる。「食事バランスガイド」は、望ましい食生活についてのメッセージを示した「食生活指針」を具体的な行動に結びつけるものとして、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安をわかりやすくイラストで示したもので、厚生労働省と農林水産省の共同により平成17年6月に策定された。牛乳・乳製品の「1つ分」は100mgのカルシウムを摂取できる量と定義され、1日あたり「2つ分」の摂取が推奨されている。

今回の研究では、40〜79歳の日本人のデータを用いて、ヨーグルトの1日の摂取量を食事バランスガイドで適量とされている牛乳・乳製品の量(ヨーグルト160gに相当)あるいはその半分量(ヨーグルト80gに相当)まで増やした場合の2型糖尿病に対する医療経済効果を、マルコフモデルを用いてシミュレーションした。ヨーグルトの摂取が2型糖尿病の発症を減少させることは複数の研究で報告されているが、今回の研究では、ヨーグルトの摂取量が1日あたり50g増えるごとに2型糖尿病のリスクが7%低下するとの報告をもとにシミュレーションした。なお、個人を対象にした介入研究ではない。

160g/日のヨーグルト摂取、10年間で医療費約1440億円減少の可能性

シミュレーションの結果、160g/日までヨーグルトの摂取量を増やすと、10年間で2型糖尿病の発症が16.1%減少する可能性があり、糖尿病関連の医療費が2.4%(約1,440億円)減少する可能性が示唆された。また、80g/日までヨーグルトの摂取量を増やすと、10年間で2型糖尿病の発症が5.9%減少する可能性があり、糖尿病関連の医療費が0.9%(約520億円)減少する可能性が示唆された。

シミュレーションに不確実性も、ヨーグルトの種類や過剰摂取に留意

これらの結果より、健康的な食習慣の一部としてヨーグルトを取り入れることは望ましいと考えられる。しかしシミュレーションによって試算される医療経済効果は、ヨーグルト摂取量の増加に関連する2型糖尿病のリスクの幅に応じて異なる可能性がある。感度分析の結果から、ヨーグルト摂取量の増加に関連する2型糖尿病のリスクの幅が、シミュレーションにおける不確実性の最大の要因であることが示された。この不確実性により、試算される医療経済効果は1日160g摂取の場合で約660億円から約2130億円、1日80g摂取の場合で約230億円から約800億円の幅がある。

「研究ではシミュレーションに必要なデータの不足から、加糖や無糖などヨーグルトの種類を考慮に入れなかった。ヨーグルトの種類によっては、2型糖尿病のリスクに影響を与える可能性があるため、留意する必要がある。また、ヨーグルトの長期的な過剰摂取は、栄養摂取の偏りを生じる恐れがあるため推奨するものではない」と、研究グループは述べている。(

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