多面的な免疫調節作用を介してITPの病態に働きかける新規BTK阻害薬

サノフィ株式会社は9月12日、リルザブルチニブ(rilzabrutinib、製品名:Wayrilz)について、既存の治療薬では効果不十分な持続性または慢性の免疫性血小板減少症(ITP)の成人患者に対する治療薬として、米国食品医薬品局(FDA)より承認されたと発表した。

複合的な免疫調節異常が原因であるITPでは、血小板数の減少(10万/μL未満)が生じ、それに伴うさまざまな出血症状や血栓塞栓症のリスクが高まる。ITP患者は、内出血や脳内出血などの生命を脅かす可能性がある出血症状のみならず、倦怠感や認知機能の低下などによる生活の質(QOL)の低下を抱えている場合がある。

リルザブルチニブは、多面的な免疫調節を介してITPの病態に働きかけることを目指した初の共有結合型ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬。新規の経口BTK阻害剤であるリルザブルチニブは、免疫系のさまざまな経路を標的として多面的な免疫調節作用を発揮することで、ITPの病態に働きかけると考えられている。

今回の承認は、ピボタルLUNA3第3相試験に基づくもの。同試験でリルザブルチニブは主要評価項目と副次評価項目を達成し、血小板数の持続的な改善およびその他ITPの症状緩和に対する良好な効果を示した。

ITP患者を対象とするP3試験で有効性・安全性を検証

LUNA3(試験ID:NCT04562766)は無作為化多施設共同第3相試験で、持続性または慢性のITPの成人患者と青少年患者を対象にリルザブルチニブの有効性と安全性をプラセボと比較する試験。試験参加者は、二重盲検治療期間において12~24週間にわたりリルザブルチニブの1回400mg、1日2回経口投与もしくはプラセボの経口投与を受けた後、28週間の非盲検治療期間に入り、その後4週間の安全性観察期間に入るか、長期継続投与試験に参加した。

主要評価項目である持続的な血小板反応は、24週間の盲検投与期間中にレスキュー薬の投与がなく、後半12週間の8週以上で血小板の各週測定が規定通り行われ、そのうち3分の2以上で血小板数が5万/μL以上であった被験者の割合として算出した。副次評価項目は、血小板反応(レスキュー治療を行うことなく血小板数が50×109/L以上に上昇するか、またはベースラインから2倍以上増加し30×109/L~50×109/L未満となることと定義)が得られるまでの週数、規定の血小板反応(例:倍増または規定範囲まで上昇)が維持された週数、レスキュー治療の実施状況、身体的疲労スコアや出血スコアなどとした。

成人患者で持続的な血小板反応とITPの症状改善を確認

今回のデータは成人患者202人によるもので、青少年を対象とした試験は現在実施中である。同試験の結果は第66回米国血液学会(ASH)年次総会で発表された。

試験の第12週に血小板数が改善した患者(リルザブルチニブ群の64%とプラセボ群の32%が該当)は、二重盲検試験を継続し、24週間の投与期間を完了した。試験において、リルザブルチニブ群ではプラセボ群と比較し、以下の結果が得られた。

1)25週時に持続的な血小板反応がみられた患者の割合は、リルザブルチニブ群23%、プラセボ群は0%で、リルザブルチニブ群で有意だった(p<0.0001)。

2)血小板反応までの期間はリルザブルチニブ群36日に対し、プラセボ群は未到達だった(p<0.0001)。

3)血小板反応の持続期間(最小二乗平均値)の比較では、リルザブルチニブ群は7週間、プラセボ群は0.7週間だった。

QOL改善効果も確認、主な副作用は消化器症状

ITPに伴う症状の評価スケールであるITP-PAQ(Immune Thrombocytopenia Patient Assessment Questionnaire)を用いて評価した9項目からなる健康関連QOLスコアの合計ポイントは、リルザブルチニブ群では10.6ポイント、プラセボ群では2.3ポイントの改善が示された。なお、この解析結果は記述的なものであり、統計学的有意性を検証する検出力は設定されていない。

リルザブルチニブ群で高頻度で認められた副作用(発現率10%以上)は、下痢、悪心、頭痛、腹痛とCOVID-19だった。

ITP以外の希少疾患についても開発進行中

米国では、2万5,000人の成人患者がこの治療薬で改善がみられると予測されている。リルザブルチニブはFDAよりITP治療薬としてファストトラック審査指定とオーファンドラッグ指定を受け、日本とEUでもオーファンドラッグ指定を受けている。

リルザブルチニブは、2025年6月にアラブ首長国連邦において、持続性または慢性のITPがみられ、他の治療にて十分な効果が得られない、または忍容性に問題がある成人患者の治療薬として承認されている。同剤は現在、EUと中国においてITPの治療薬として審査中である。

同社は現在、温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)、IgG4関連疾患(IgG4-RD)や鎌状赤血球症(SCD)をはじめとする各種の希少疾患を対象とする試験を行い、リルザブルチニブの開発を進めている。なお、これらの疾患に対するリルザブルチニブの使用については臨床開発段階にあり、その安全性と有効性は、いずれの規制当局でも評価されていない。(

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