典型的な認知症の症状が現れてから診断に至るまでには平均で3年半かかっていることが、新たな研究で示された。若年性認知症の場合には、診断までにかかる年数はさらに長くなることも少なくないという。論文の上席著者である英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)精神医学教授のVasiliki Orgeta氏らによるこの研究結果は、「International Journal of Geriatric Psychiatry」に7月27日掲載された。

Orgeta氏は、「認知症のタイムリーな診断は、治療へのアクセスを改善し、人によっては、症状が悪化する前の軽度の状態で過ごす期間を延ばすことにもつながる」と述べ、診断プロセスの迅速化の重要性を強調している。初期段階で投与すれば、アルツハイマー病の進行を遅らせることができる可能性のある薬剤が開発されたことで、認知症の早期診断はこれまで以上に重要になっていると同氏らは指摘する。

Orgeta氏らは、ヨーロッパ、米国、オーストラリア、中国で実施された13件の研究を対象にメタアナリシスを実施し、認知症の症状発現から診断までにかかる時間(time to diagnosis;TTD)と、TTDに影響を与える因子について検討した。13件の研究は、ヨーロッパ、米国、オーストラリア、中国で実施されたもので、解析対象者は合計で3万257人、認知症の発症年齢は54〜93歳であった。

13件中10件の研究を統合して解析した結果、全てのタイプの認知症における平均TTDは3.5年であった。また、65歳未満で発症する若年性認知症に関する6件の研究を用いた解析では、平均TTDは4.1年とやや長くなることが示された。TTDに影響を与える因子については研究間で一貫していなかったものの、若年性認知症や前頭側頭型認知症では、TTDが長くなる傾向が一貫して認められた。さらに、1件の研究では、黒人ではTTDが長い傾向が示されていた。

では、TTDがこれほど長くなる理由は一体何なのだろうか。共著者であるUCL精神医学部門のPhuong Leung氏は、「認知症の症状は正常な老化と間違われることが多い。また、恐怖や偏見、世間の認知度の低さから助けを求めるのを躊躇する人もいる」と述べている。研究グループによると、その他にも認知症が疑われる症例に対する非効率的な医師紹介システム、患者と医師の間の言語の壁、メモリークリニックのスタッフ不足なども、TTDが長くなる要因として挙げられるという。

Orgeta氏は、「認知症の診断を迅速化するために多方面からのアプローチが必要だ。啓発キャンペーンは、初期症状に対する理解を深め、偏見を減らし、人々がより早く助けを求めるよう促すのに役立つだろう。臨床医の研修も早期発見と紹介には欠かせない。さらに、早期介入と個別支援へのアクセスを向上させて、認知症患者とその家族が必要な支援を受けられるようにすることも不可欠だ」と話している。(HealthDay News 2025年7月29日)

https://www.healthday.com/health-news/senior-health/dementia-diagnosis-typically-comes-35-years-after-symptoms

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