コレステロール値が年ごとに急上昇したり急降下したりする高齢者は、認知症や認知機能低下のリスクが高い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。モナシュ大学(オーストラリア)のZhen Zhou氏らによる同研究で、コレステロール値の変動幅が最も大きい高齢者では、最も小さい高齢者と比べて認知症のリスクが60%高いことが示されたという。詳細は、「Neurology」に1月29日掲載された。Zhou氏は、「毎年測定したコレステロール値の変動幅は、ある時点で測定されたコレステロール値よりも多くの情報をもたらし、認知症リスクのある人を特定するための新たなバイオマーカーとなり得ることを示唆する研究結果だ」と米国神経学会(AAN)のニュースリリースで述べている。

Zhou氏らは本研究の背景について、中年期の高コレステロール値は、その後の認知機能の低下や認知症のリスク因子であることが示されていると説明する。しかし、コレステロールが高齢者の脳の健康状態に与える影響に関しては、何も影響しないとする研究がある一方で、コレステロール値が低いと認知症リスクが高まる可能性があるとする研究があるなど一貫していないという。

Zhou氏らは今回、研究開始時には認知症やその他の記憶障害がなかったオーストラリアと米国の65歳以上の男女9,846人(年齢中央値73.9歳、女性54.9%)の脳の健康状態を追跡調査した。研究参加者のコレステロール値は、研究開始時に加え、開始から3年後まで年1回の受診時に測定された。また、参加者は記憶力の検査も毎年受けた。開始から3回目の受診後、参加者は、認知症の発症について中央値で5.8年、認知症の前段階を表す概念の一つであるcognitive impairment with no dementia(CIND)について中央値5.4年にわたり追跡された。追跡期間中に認知症発症例が509例、CINDイベント発生が1,760件記録されていた。参加者は、総コレステロール(TC)、LDL-C(悪玉コレステロール)、HDL-C(善玉コレステロール)、トリグリセライドの変動幅に応じて、Q1群からQ4群に分類された。

その結果、研究開始時から最後の測定時までの間のTCの変動幅が最も大きいQ4群では、認知症の発症率が最も高く(1,000人年当たり11.3人)、変動幅が最も小さいQ1群(1,000人年当たり7.1)と比べてリスクが60%増加することが明らかになった(ハザード比1.60、P=0.001)。LDL-C値の変動についても、変動幅が大きい群ほど認知症リスクが高くQ2群、Q3群、Q4群のハザード比はそれぞれ、1.17、1.26、1.48であった(P=0.002)。さらに、CINDについても同様の傾向が認められ、TCとLDL-Cの変動幅が最も大きいQ4群ではCINDリスクが最も高く、Q1群と比べたハザード比はそれぞれ1.23と1.27であった。

ただしZhou氏らは、この研究でコレステロール値の変動と認知症には因果関係があることが証明されたのではなく、あくまでも両者が関連することが示されたに過ぎないと説明している。

Zhou氏らは、コレステロール値の変動が認知症リスクを高める理由として、変動が動脈壁の脂質プラークの組成を変化させることで脳に損傷を与え、脳細胞への血流を妨げたり、脳卒中を引き起こしたりするリスクを高める可能性があるとの推測を示している。また、こうしたコレステロール値の変動は、認知機能の低下を引き起こす真の要因となっている他の慢性疾患の副次的な影響である可能性も考えられるとの見方を示している。

Zhou氏は、「認知機能低下や認知症のリスクがあり、介入の効果を期待できそうな人を特定するため、高齢者のコレステロール値の経時的な変動を監視すべきである。具体的な介入法としては生活習慣の是正やスタチンの使用開始または使用継続に確実につなげることなどが考えられる」と話している。(HealthDay News 2025年1月30日)

https://www.healthday.com/health-news/neurology/cholesterol-changes-in-seniors-linked-to-brain-health

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