新生児のゲノム解析により、標準的な新生児スクリーニングと比べて、より多くの予防可能または治療可能な健康上の問題を発見できることが、新たな研究で示された。ゲノム解析によって4,000人の新生児の中から重度の治療可能な健康問題を抱える120人の新生児を特定できたが、標準的なスクリーニングではわずか10人しか特定できなかったという。米コロンビア大学アーヴィング医療センターアレルギー・免疫・リウマチ科チーフのJoshua Milner氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に10月24日掲載された。
このゲノム解析を受けた新生児の中には、致死的な免疫不全障害である重症複合免疫不全症(SCID)を引き起こすまれな遺伝子変異が検出され、骨髄移植によって命を救うことができた新生児もいたという。一方、標準的なスクリーニングでは、この新生児のSCIDは見逃されていた。Milner氏は同医療センターのニュースリリースの中で、「現行の方法と比べてはるかに多くの問題を検出することができるゲノム解析を、次世代の標準的な新生児スクリーニング法として実施すべきだ」と主張している。
遺伝子スクリーニングでは、毎年、新たに同定される病態に応じて、スクリーニング対象とする遺伝子の変異を容易に拡大できるという。研究グループの一員でコロンビア大学ヴァジェロス内科外科医学校小児科学部長のJordan Orange氏は、「標準的な検査でこれらの疾患を全てスクリーニングするには高額な費用が必要になる。しかし、遺伝子スクリーニングであれば、対象とする疾患を追加する場合でも、わずかな追加費用で行える。これにより、これまでスクリーニングすることなど考えもしなかったような治療可能な疾患のスクリーニングを行えるようになる」と説明している。
米国では新生児の約300人に1人が現行の新生児スクリーニングによって治療可能な健康上の問題の診断に至っている。標準的なスクリーニングでは約60の疾患に関連する特定のバイオマーカーを調べるために血液検査が行われる。一方、遺伝子スクリーニングでは、新生児のゲノム解析により数百もの遺伝子変異について解析が行われ、何千もの遺伝性疾患を発見できる可能性を秘めている。
今回の研究で用いた遺伝子スクリーニングは、450を超える健康上の問題に関連する遺伝子変異を探すものである。研究グループは、2022年9月から2023年7月の間にニューヨーク長老派教会病院で生まれた赤ちゃんの家族(5,555家族)にゲノム解析の機会を提供し、4,000家族がそれを受け入れた。初年度には、156の治療可能な希少疾患に関連する遺伝子の解析が行われた。赤ちゃんの親には、現時点では治療不可能だが早期介入は可能な99の疾患の遺伝子パネルを追加することもオプションとして提示された。
その結果、151人の新生児が希少疾患に罹患している可能性のあることが明らかになり、追加検査でそのうちの120人が実際に陽性であることが判明した。また、そのほとんど(120人中92人)は、従来のスクリーニングの対象外であったグルコース-6-リン酸脱水素酵素欠損症(G6PD欠損症)であった。一方、120人の新生児のうち、標準的なスクリーニング検査で検出されたのはわずか10人だった。
Orange氏は、「新生児スクリーニングは公衆衛生における最も優れた成果の一つだ。全ての赤ちゃんが、最も健康的な人生を送る機会を同じように持てるようにするという意味で、新生児スクリーニングはヘルスケアを瞬時に均一化する役割を果たしている」と言う。その一方で研究グループは、より安価で簡便な遺伝子解析法の出現によって、ゲノム解析が新生児の潜在的な病気を見つけるための良い検査選択肢となる可能性があると指摘している。Milner氏は、「われわれはまた、小児医療における革命の真っただ中にあり、予想以上に多くの小児疾患が遺伝的要因に起因していることを認識しつつある。そして、それらは治療可能なのだ」と話している。(HealthDay News 2024年10月23日)
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