糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が加齢による機能低下を改善することを示した順天堂大学ほかの研究をご紹介いたします。
加齢により老化細胞が蓄積され、動脈硬化や糖尿病といった生活習慣病、また、アルツハイマー病などの加齢関連疾患が引き起こされることは知られており、老化細胞除去をターゲットにした治療法の研究が進んでいます。しかし、現状は老化細胞除去薬として候補に挙がっているものには抗がん剤が多く、副作用が懸念されることから、老化細胞に選択的に作用し副作用が少ない治療方法の研究が行われました。
研究では、血糖を低下させる糖尿病治療薬としてすでに臨床で使用されているSGLT2阻害薬をマウスに投与したところ、内臓脂肪に蓄積された老化細胞が除去され、さらに糖代謝異常などが改善されたことを報告しています。また、動脈硬化プラーク※1の縮小や、加齢による機能低減の改善なども見られました。そして、SGLT2阻害薬によって免疫チェックポイント分子※2であるPD-L1が抑制されることで老化細胞を除去する免疫系を活性化し、老化細胞の除去を促進する機序を明らかにしています。
今後の展開として、研究チームはアルツハイマー病などの加齢関連疾患の治療への応用の可能性を示唆しています。SGLT2阻害薬は、すでに臨床において糖尿病の治療に用いられており、副作用の懸念も少ない治療薬ですので、即戦力になりえる老化細胞除去薬として期待が持てそうです。
順天堂大学ホームページ内のニュース&イベント「臨床応用可能な老化細胞除去薬の同定に成功―アルツハイマー病などの加齢関連疾患への治療応用の可能性―」(2024年5月30日)にて公開されています。
https://www.juntendo.ac.jp/news/18741.html
※1 コレステロールなどの脂質が動脈の内膜に蓄積してできた病変のこと。
※2 免疫応答を制御し、免疫システムの恒常性を保つ役割をもつ分子のこと。