遺伝性網膜ジストロフィ(inherited retinal dystrophy:IRD)は、遺伝子変異によって網膜の機能に障害をきたす一連の遺伝性疾患です。その多くは、暗いところでものが見えにくくなる、視野が狭くなるなどの症状が若年期より始まり、場合によっては失明に至ることもあります。これまで、根本的な治療法がないとされていましたが、近年、研究が進み、遺伝学的検査によって原因遺伝子を同定することが可能となりました。また、一部の原因遺伝子をターゲットとした遺伝子治療薬の開発が国内外で進み、それに応じた遺伝子治療を受けることが可能となりつつあります。IRDの診断・治療においては、従来の臨床所見に加え、原因遺伝子の情報に基づいた、より個別化された診断の重要性が高まっています。
このような中、「遺伝性網膜ジストロフィにおける遺伝学的検査のガイドライン」(日本眼科学会より)が策定されました。本ガイドラインは、IRDの遺伝学的検査について適応対象や検査の実施体制、さらに検査実施前後の患者への説明や遺伝カウンセリングの実施、インフォームド・コンセントの取得など、実際の診療の現場での手順と対応について示されています。
遺伝子治療の進歩によりIRD診断と治療における遺伝学的検査の重要性が高まる中、本ガイドラインにより診療の充実とゲノム医療への発展に寄与することが期待されます。
ガイドラインは、公益財団法人 日本眼科学会ホームページ内のガイドライン・答申「遺伝性網膜ジストロフィにおける遺伝学的検査のガイドライン」(2023年6月9日)からご覧いただけます。
https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=638&dispmid=909