ショウガは、自己免疫疾患に関連する体内の炎症のコントロールに役立つかもしれない。自己免疫疾患のマウスや健康なヒトを対象とした研究の結果、ショウガ成分は、白血球の一種である好中球の機能に影響を与えることが判明したという。米コロラド大学医学部准教授のKristen Demoruelle氏らの報告で、詳細は「JCI Insight」に9月22日掲載された。
この研究では、免疫を司る白血球の一種である好中球が活性化したときに生じる、好中球細胞外トラップ(NET)形成という現象に着目した。NETは、好中球から排出される微細なクモの巣状の構造物だが、過剰に形成されると炎症や血栓形成を促進し、抗リン脂質抗体症候群(APS)やループス、関節リウマチなどの自己免疫疾患の原因になると言われている。
一方、ショウガに含まれるジンゲロールという生理活性物質は、好中球の機能に影響を及ぼすと言われている。そこで本研究では、ショウガの成分を抽出したものを、自己免疫疾患のマウスや健康なヒトのボランティアに投与し、その働きを調べた。マウスには粉末状の抽出物を餌や生理食塩水に混ぜて与え、ヒトにはカプセル入りのサプリメントとして服用してもらった。
その結果、ショウガの摂取はNET形成を抑制することが明らかになった。ショウガ抽出物をAPSまたはループスのモデルマウスに投与すると、血中のNETが減少し、さらにこれらの疾患に特有の大静脈血栓症の抑制や自己抗体産生の減少が観察された。また、健康なヒトが1週間にわたり1日1回、100mgのショウガ抽出物(ジンゲロール約20mg含有)を服用すると、好中球の内部でcAMPという化学物質の増加が認められた。この高レベルのcAMPは、疾患に関連する刺激に対するNET形成の反応を抑制した。
Demoruelle氏は大学のニュースリリースで、「好中球が異常に過剰活動してしまう病気は多い。われわれは、ショウガがNET形成の抑制に役立つことを発見した。ショウガは天然のサプリメントであり、複数の異なる自己免疫疾患の炎症や症状の治療に役立つ可能性があるため、この結果は重要だ」と話している。
また、論文共著者である米ミシガン大学リウマチ科准教授のJason Knight氏も、「ショウガはヒトにおいて明らかな抗炎症作用を持つが、今回の研究では初めて、その根底にある生物学的メカニズムのエビデンスを提供することができた」と説明。こうしたエビデンスが、医療従事者と患者にとって、治療計画の一環としてショウガのサプリメントを摂取することが有益かどうかを議論するきっかけになることを期待していると同氏らは述べている。
Knight氏は、「過剰活動している好中球と戦うことが知られている天然のサプリメントや処方薬はあまり多くない」とし、「そのため、ショウガは既存の治療プログラムを補完する実用的な能力を持つと思う。今後の研究目標は、人々の症状緩和を助けるために、より戦略的で個別化されたアプローチを開発することだ」とコメントした。
研究チームでは、ループス、関節リウマチ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの自己免疫疾患や炎症性疾患の患者を対象として、ショウガの臨床試験を実施することを考えているという。(HealthDay News 2023年9月25日)
https://consumer.healthday.com/ginger-2665693699.html
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