100歳まで生きるための鍵は、腸内に生息するウイルスの多様性かもしれない。日本人を含む百寿者の腸内細菌叢(マイクロバイオーム)とウイルス叢(バイローム)の解析から、その可能性が浮かび上がった。米ブロード研究所のRamnik Xavier氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Microbiology」に5月15日掲載された。同氏は、「マイクロバイオームとバイロームの相互作用を示したこの研究結果は、人の加齢とともに腸内の微生物の生態がどのように変化するのかを教えてくれるかもしれない。明らかになったデータは、腸内生態系が健康を左右する仕組みを解明するための重要な出発点となる」と語っている。

近年、腸内細菌叢が全身の免疫機能に関与しており感染症リスクに影響を及ぼしていることや、加齢に伴いリスクが上昇するさまざまな疾患の病態と関連のあることが明らかになってきている。それに対して、腸内ウイルス叢の役割や疾患リスクとの関連はほとんど明らかにされていない。

今回、Xavier氏らは、日本とイタリア(サルデーニャ島)の住民195人から採取して行ったメタゲノム解析(DNAの網羅的な解析)のデータを、若年成人(18歳超)、高齢者(60歳超)、および100歳以上の百寿者に分けて比較するという検討を行った。その結果、百寿者の腸内には、感染症から身を守るのに役立つ多種多様な細菌やウイルスが存在することが明らかになった。

例えば百寿者の腸内ウイルス叢は、微生物叢に存在する硫酸塩を分解する高い能力を持っていることが分かった。これは、腸管粘膜を健康な状態に保つとともに、細菌感染症と戦う力をサポートする可能性がある。この結果について研究者らは、「腸内の細菌とウイルスが相互に作用することで、加齢に伴う疾患の予防などに重要な役割を果たすという既存のエビデンスを、さらに強化するものである」と述べている。

今回発表された研究の以前にXavier氏らの研究グループは、百寿者の腸内細菌叢が、感染症の予防に役立つ可能性のある特異な胆汁酸を生成していることを見いだしたと報告している。また、ほかの研究グループからは、細菌に感染するウイルスが、マウスの認知機能に影響を与えるという、動物実験のデータが報告されている。ただし、採取した検体からウイルスのDNAのみを抽出するという研究の困難さのために、腸内ウイルス叢が人間の腸内環境や老化現象にどのような役割を果たしているかについては、いまだ多くの不明点が残されている。(HealthDay News 2023年5月31日)

https://consumer.healthday.com/microbiome-2660721284.html

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