習慣的な運動によってパーキンソン病のリスクが低下する可能性を示唆する、フランス国立衛生医学研究所のAlexis Elbaz氏らの研究の結果が、「Neurology」に5月17日掲載された。
パーキンソン病は、運動を円滑に行うために必要なドーパミンという物質を作っている、脳の中の黒質という部分の細胞が減っていく病気。ドーパミンが減ることの影響は多岐にわたり、主な症状は手の震えや硬直といった運動障害だが、抑うつや記憶力・思考力の低下などが現れることもある。
パーキンソン病の原因は明らかでなく、遺伝的な背景と環境要因の複雑な相互作用によって発症すると考えられている。修正可能な環境要因は、頭部外傷などを除いてほとんど知られていない。もし運動でパーキンソン病リスクが下がる可能性があるのなら、数少ない予防法の一つとしての期待が高まる。Elbaz氏は、「われわれの研究結果は、進行抑制以外の治療法がなく、生活の質に深刻な影響を与えるパーキンソン病という病気を、運動によって予防できるかもしれないという重要な知見である」と語っている。
同氏らの研究は、フランスの国民健康保険に加入している女性を対象に、1990~2018年に実施されたコホート研究のデータを用いて行われた。研究参加者は数年おきに、食事や運動の習慣、健康状態に関するアンケートに回答。運動習慣については、スポーツやランニングなどの高強度運動だけでなく、ウォーキング、階段昇降、あるいは家事などの日常的な生活に伴う身体活動も含めて評価されていた。
2000年時点でパーキンソン病でなかった9万5,354人の女性のうち、平均17.2年の追跡で1,074人がパーキンソン病を発症。年齢、BMI、食習慣などの影響を調整後、運動量の最も多い上位4分の1の群は下位4分の1の群に比べて、パーキンソン病の発症リスクが25%有意に低かった〔調整ハザード比0.75(95%信頼区間0.63~0.89)〕。
研究者らは、「この結果は運動がパーキンソン病発症リスクを下げたという因果関係の証明にはならない」としている。ただし、「パーキンソン病の初期段階にあった女性が、疾患の影響のために運動量が少なかったという、因果の逆転の結果を見ている可能性は低い」とも述べている。その根拠として、パーキンソン病と診断された女性の運動量を、診断から最長20年以上さかのぼって解析したデータを挙げている。その解析では、パーキンソン病を発症しなかった群との運動量の差は診断の約10年前から広がり始めていたが、それ以前のパーキンソン病の初期症状が現れているとは考えにくい時期の運動量もやはり、後年になってパーキンソン病と診断された女性の方が少なかったという。
この報告について、非営利団体であるパーキンソン病財団のMichael Okun氏は、「重大かつ重要な知見」と評価。同氏によると、運動によってパーキンソン病リスクが低下する可能性を示した研究はこれまでにもあったが、それらは女性よりもパーキンソン病罹患率の高い男性でのみ有意な関連が認められていたという。Okun氏は、「新たに報告された大規模な研究から、性別にかかわらずパーキンソン病リスクを抑制する方法として、人生の早い段階から運動の実施を検討すべきであることが示唆される」と述べている。(HealthDay News 2023年5月18日)
https://consumer.healthday.com/parkinson-s-disease-2660276212.html
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