緑色の葉野菜や魚などの健康的な食品をたくさん食べる習慣のある高齢者は、「脳年齢」が若い可能性のあることが、米ラッシュ大学のPuja Agarwal氏らの研究で示唆された。健康的な食事法である地中海食とMIND食のいずれかに近い食事を取っていた高齢者では、アルツハイマー型認知症に特徴的な、脳内でのアミロイドβの蓄積とリン酸化タウタンパク質の凝集(神経原線維変化)が少なかったという。この研究結果は、「Neurology」に3月8日掲載された。
魚やオリーブ油、野菜、豆類、ナッツ類、食物繊維が豊富な穀物を多く摂取する地中海食が、心疾患や脳卒中のリスク低下につながることは広く知られている。一方、MIND食は、地中海食によく似ているが、野菜や果物のうち緑色の葉野菜やベリー類の摂取をより重視している点が特徴だ。これは、これらの食品が脳の健康に良いことを示した研究結果に基づいている。
Agarwal氏らによると、地中海食とMIND食ではいずれも、体内の炎症を抑え、細胞をダメージから守る作用を持つさまざまな栄養素や化学物質を含む植物性食品を多く摂取する。また、赤肉や砂糖、加工度の高い食品の摂取は避けるという点も、これらの食事法に共通した特徴の一つである。
今回報告された研究では、ラッシュ大学で進行中の認知機能と加齢変化に関する疫学研究(Rush Memory and Aging Project)の参加者581人の剖検脳組織の調査が行われた。参加者は研究登録時に、死後の脳提供に同意していた。その後、毎年食事に関する質問票に回答。その情報からAgarwal氏らは、死亡した581人の食事が地中海食およびMIND食の要素をどの程度満たしているかをスコア化し、3群に分けた。
その結果、地中海食スコアが最も高かった群では、同スコアが最も低かった群と比べてアミロイドβの蓄積量と神経原線維変化に基づく脳年齢が18年低かった。MIND食スコアに関しても、最高スコア群と最低スコア群の間に認められた脳年齢の差は12歳であることが示された。また、Agarwal氏によると、特に緑色の葉野菜の摂取量が週7サービング(サービングは食事の提供量の単位で、1食分として食べる量)以上だった人では、週1サービング以下だった人と比べて脳年齢が約19年低いことが示された。
Agarwal氏らは、先行研究で地中海食とMIND食はいずれも認知機能の低下を遅らせるとともに、アルツハイマー型認知症のリスク低下に関連することが示されていたと説明。その上で、「われわれが得た研究結果は、アルツハイマー型認知症の客観的な兆候で、認知症の症状が現れる何年も前から脳内に現れ始めるアミロイドβの蓄積や神経原線維変化に、食事が関係していることを示したものである」と述べている。またAgarwal氏は、食事を変化させるだけで大きな差が生まれることを示唆したという点で、この研究結果は「エキサイティングだ」と話している。
専門家らは、「この研究結果は、ホウレンソウや魚を食べれば認知症を予防できることを示したものではない」として、慎重な解釈を求めている。その上で、「ただし、健康的な食事が脳の老化の抑制に関連するというエビデンスは増えつつあり、今回の研究結果がそうしたエビデンスを補強したことは確かだ」との見解を示している。(HealthDay News 2023年3月9日)
https://consumer.healthday.com/alzheimer-s-and-diet-2659497761.html
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