新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に一度感染したりワクチン接種によって免疫を獲得すると、COVID-19罹患時の重症化リスクが低下する一方で、感染リスクの抑制効果は十分でない理由の一部が明らかになった。感染後の重症化の抑止に重要な血液中の抗体価は比較的長期間、高いレベルに維持されるのに対して、感染自体を防ぐのに重要な鼻粘膜の抗体価は短期間で低下してしまうためではないかという。また、ワクチン接種によって血液中の抗体価は上昇するものの、鼻粘膜の抗体価はそれほど大きく変化しないとのことだ。
この研究は、英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)国立心肺研究所のFelicity Liew氏らの研究によるもの。結果の詳細は「eBioMedicine」に12月19日掲載された。Liew氏は、「われわれの研究以前は、呼吸器感染症からの防御に重要な鼻粘膜の抗体が、COVID-19感染やワクチン接種からどのくらいの期間、高いレベルに維持されるのかが不明だった。今回の研究により、鼻粘膜の抗体は血液中の抗体よりも短命であることが分かった。この事実は、COVID-19に繰り返し感染してしまう人がいることの重要な原因かもしれない」と語っている。
Liew氏らの研究の解析対象は、2020年2月~2021年3月にCOVID-19で入院した446人。入院時と6カ月後、1年後、および、ワクチン接種を受けた307人については接種前後にも検体を採取して抗体価の変化を検討した。
その結果、血液中のIgA抗体やIgG抗体はCOVID-19入院から2週間以内に有意に上昇し、1年後にも有意に高い値が維持されていた。それに対して鼻粘膜の抗体のうち、IgG抗体は血液中の抗体と同じように変化していたが、IgA抗体は入院後4週以内に有意に上昇したものの、9カ月後には入院時点と有意差のないレベルに低下していた。また、ワクチン接種を受けた人では、血液中と鼻粘膜の抗体がともに上昇していたが、鼻粘膜の抗体の上昇幅は少なく、その持続期間も一時的だった。
論文共著者の1人であるICL国立心肺研究所のPeter Openshaw氏は、「われわれが現在入手可能なワクチンは、COVID-19罹患時の重症化と死亡リスクを抑制するように作られており、その目的においては大きな効果を示している。しかし、感染リスクそのものを抑制するワクチンの開発も不可欠だ」と述べている。同氏らは、感染リスクをも抑制し得るワクチンとは、「鼻粘膜の抗体価をより効果的に高めることのできるワクチンであるべきで、鼻腔へのスプレーまたは吸入という投与経路を検討する必要がある」としている。
Openshaw氏は、「現在用いられているワクチンによって、重症COVID-19患者が減少傾向にあることは素晴らしいことだ。しかし、感染リスク自体を抑制できれば、ウイルスが伝播する機会が減り、さらに良い状況へと前進する」と付け加えている。(HealthDay News 2022年12月21日)
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