中等~重症のアトピー性皮膚炎治療で開発中の抗OX40ヒトモノクローナル抗体
協和キリン株式会社と米国アムジェン社は9月9日、OX40(受容体型分子)を標的とするT細胞リバランス療法ロカチンリマブについて、中等症から重症の成人および青年期アトピー性皮膚炎患者を対象に評価するROCKET-Ascend試験の中間結果のトップラインデータを発表した。
ロカチンリマブは、中等症から重症のアトピー性皮膚炎の治療のために開発されている抗OX40ヒトモノクローナル抗体。OX40を標的とすることで病原性のエフェクターT細胞およびメモリーT細胞を抑制および減少させる、世界初かつ唯一のT細胞リバランス療法となる可能性がある。OX40は、アトピー性皮膚炎やその他の状態において全身および局所の炎症反応を促進する役割を持つ共刺激受容体。OX40を発現するエフェクターT細胞は、アトピー性皮膚炎患者の病変部位に存在し、疾患の病態生理学において重要な役割を果たしていることが報告されている。
4週または8週ごとにロカチンリマブ単剤投与、皮膚症状の改善など持続的な治療効果
進行中のROCKET-Ascend試験は、過去のROCKETプログラム(Ignite、Horizon、Shuttle、Astro、Orbit、Voyager)のいずれかの試験を完了した約2,600人の患者を対象に、ロカチンリマブ(150mgまたは300mg)を4週または8週ごとに投与し、その長期的な安全性と有効性を評価する試験デザイン。同解析は、いずれかのROCKET試験で最初の24週間の治療を終え、その後ROCKET-Ascend試験でさらに32週の治療を受けた成人患者のデータを解析している。
同試験の主要評価項目は、ロカチンリマブの長期安全性の評価。成人患者において治療開始後に認められた最も多い有害事象(ロカチンリマブ投与群で100人年あたり5件以上かつプラセボより多く認められた事象)は、これまで他のROCKETプログラムの試験で見られた事象と一致し、上気道感染症(鼻咽頭炎、咽頭炎を含む)、アフタ性潰瘍、頭痛、インフルエンザ、咳、鼻炎である。有害事象による治療中止率は、成人のロカチンリマブ投与群全体で低い水準であった。ROCKET-Ascend試験を含むROCKET第3相プログラム全体で、ロカチンリマブ投与に伴う消化管潰瘍の発生率は現時点で100人年あたり1件未満。同試験は現在も継続中であり、中等症から重症のアトピー性皮膚炎を対象とした成人および青年期患者におけるロカチンリマブの長期的な安全性および有効性について、ROCKET-Ascend試験で最長104週まで追跡評価する。
今回の副次評価項目では、ROCKET-HorizonまたはIgnite試験においてレスキュー治療なく24週時点でEASI 75もしくはvIGA-AD 0/1を達成した成人患者を、ROCKET-Ascend試験で再度ランダム化し評価。4週または8週ごとにロカチンリマブ単剤継続投与を受けた多くの患者において1年間の治療を通じて、皮膚症状の改善、掻痒感、病変範囲や重症度いずれの指標において持続的な治療効果が認められた。
最初の24週間に4週投与後、投与間隔延長の8週ごと継続投与の可能性も
アムジェンEVPのJay Bradner研究開発担当役員は「アトピー性皮膚炎は多様性のある疾患であり、現行の治療では十分なコントロールが得られていない患者が多く存在する。今回の知見によりOX40を標的とする本メカニズムがこの慢性疾患の根本的な要因に働きかけることについての理解が深まり、ロカチンリマブの持続的な治療効果および長期的な安全性プロファイルに関するさらなる情報がもたらされると考えている。今後も継続してモニタリングしていく」と、述べている。
また、協和キリンの山下武美取締役副社長兼Chief Medical Officer(CMO)は「中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者の多くは、治療目標の達成やそれを維持できる新たな治療選択肢を待ち望んでいる。これらの結果は、ロカチンリマブに関する理解を深める上で非常に重要なマイルストンとなるものである。ROCKET-Ascend試験の結果から得られた今回の知見から、成人の中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者において、1年間の治療を通じたロカチンリマブの継続的な治療効果が認められ、最初の24週間に4週ごとの投与を受けた後は、投与間隔を延長した8週ごとの継続投与の可能性も示唆された。これは患者の治療に伴う日々の負担を軽減することにもつながると考えている。今後も最新の情報を共有していく」と、述べている。(QLifePro編集部)