SLEにおける倦怠感、QOLに深刻な影響があるが対応は困難

米国バイオジェン社は6月12日、Fcフリーの新規抗CD40L薬候補であるダピロリズマブ ペゴル(dapirolizumab pegol;DZP)の全身性エリテマトーデス(SLE)を対象とする第3相PHOENYCS GO試験の追加の詳細なデータを発表した。同試験は、ベルギーのUCB社と共同で実施したもの。データは、スペインのバルセロナで開催された欧州リウマチ学会(EULAR 2025)の年次会議で発表された。

SLEは、自己反応性T細胞、B細胞および抗原提示細胞の活性化によって引き起こされる慢性かつ多因子性の自己免疫疾患。複数の器官系に症状が発現し、疾患期・再燃期と不活動期が交互に生じる。また、SLEでは、発疹、関節炎、貧血、血小板減少症、漿膜炎、腎炎、痙攣発作、精神疾患など、さまざまな症状が引き起こされる。

SLEの一般的な症状が倦怠感。患者の生活の質に深刻な影響をおよぼす可能性があるが、依然として対応が困難な課題のひとつとなっている。

SLEの新薬候補「DZP」、ヒト化Fc遊離PEG結合Fab’フラグメント

DZPは、開発中の新規ヒト化Fc遊離ポリエチレングリコール(PEG)結合抗原結合(Fab’)フラグメント。同剤はCD40Lシグナル伝達を阻害することにより、B細胞の活性化および自己抗体の産生を抑制する。また、1型インターフェロン(IFN)の分泌を抑制し、T細胞および抗原提示細胞(APC)の活性化を減弱させることが示されている。

第3相試験で投与48週時に臨床症状の有意な改善を確認

DZPは現在、2社が共同して、SLEの治療薬として第3相臨床試験を実施している。今回の「PHOENYCS GO試験」は、中等症から重症のSLE患者を対象としている。同試験において、DZPは主要評価項目である投与48週時のBILAG2004に基づく複合ループス評価法(BICLA)を用いた評価において有意な臨床症状の改善を示した。

標準治療との併用で倦怠感を改善

さらに、標準治療(SOC)にDZPを追加投与した患者では、二つの倦怠感評価項目で改善が見られた。ただし、主要評価項目(48週後のBICLA)では有意な改善を示したが、主な副次評価項目で統計学的有意性が得られなかった(p=0.1776)ため、以降のすべての副次および三次評価項目は記述的解析であり、名目上のp値が含まれている。

一つ目は、投与48週時点での慢性疾患治療の機能評価(Functional Assessment of Chronic Illness Therapy:FACIT)。倦怠感のスコアの改善はDZP投与群(ベースラインからの変化量8.9)の方が、SOC単剤投与群(5.2、名目p=0.0024)よりも大きかった。

二つ目に、SLE患者における疲労経験を把握するために最近開発された指標であるFATIGUE-PROを用いた評価を実施した。この評価法では、48週時点の身体的疲労(ベースラインからの変化量の群間差7.6)、精神的および認知的疲労(5.6)、ならびに疲労感受性(7.8)スケールにおいて、SOC単剤投与群と比較してDZP投与群でベースラインからの大きな改善が認められた(名目p<0.05)。

疾患活動性と寛解の指標も改善、追加解析で確認

追加解析では、ループス低疾患活動性状態(Low Lupus Disease Activity State:LLDAS)および疾患寛解(Definition of Remission in SLE:DORIS)の指標に改善が認められた。いずれの指標にも、必要な低用量グルココルチコイドの摂取に加えて、疾患活動性の評価が含まれる(LLDASでプレドニゾン7.5mg/日未満、DORISでプレドニゾン5mg/日未満)。

まず、48週時点において、低疾患活動性を達成した被験者の割合は、DZP投与群がSOC単剤投与群の2倍であった(それぞれ40.9%および19.6%;名目p<0.0001)。LLDASを達成した被験者の割合は、DZP+SOC群の方がSOC単剤投与群よりも12週と早期時点から高かった(名目p<0.05)。

また、48週までの来院の50%以上で低疾患活動性を達成した被験者の割合は、DZP+SOC群では23.6%であったのに対し、SOC単剤投与群では15.9%だった(名目p=0.1042)。48週時点において、DORISを達成した被験者の割合も、DZP投与群(19.2%)の方がSOC単独群(8.4%)よりも高かった(名目p=0.0056)。

安全性プロファイルはおおむね良好

DZPの安全性プロファイルは、おおむね良好だった。安全性の結果は、過去のDZPの試験および免疫調節薬を投与したSLE患者の結果と一貫していた。試験治療下で発現した有害事象(TEAEs)が認められた被験者の割合は、DZP+SOC群の方がSOC単剤投与群と比較して高かった(82.6% vs.75.0%)。重篤なTEAEsの発現割合は、DZP+SOC群で9.9%であり、SOC単剤投与群の14.8%と比較して低かった。TEAEsによる投与中止または試験参加中止は、DZPとSOCの併用投与を受けた被験者の4.7%(10例)およびSOC単剤投与を受けた被験者の3.7%(4例)で認められた。

SLEのアンメットニーズに応える治療薬として期待

今回の試験において、DZPは中等症から重症の全身性エリテマトーデス(SLE)患者の疾患活動性において有意な臨床症状の改善を示した。また、倦怠感および疾患活動性/寛解などの追加の臨床評価項目でも改善が認められた。

SLEに対するDZPの安全性および有効性はまだ確立されておらず、世界のどの規制当局からもSLEに対する使用は承認されていない。現在、PHOENYCS GOの結果を確認することを目的として、DZPの2つ目の第3相試験(PHOENYCS FLY)が進行中だ。(

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