新たに開発された経口投与型のワクチンが、尿路感染症(UTI)を繰り返す「再発性UTI」の患者にとって抗菌薬に代わる治療法となる可能性のあることが、英ロイヤル・バークシャーNHS財団トラストの泌尿器科専門医であるBob Yang氏らの研究で示唆された。同氏らによると、スプレーを使って舌の下にワクチンを投与した再発性UTI患者の半数以上(54%)は、その後9年にわたってUTIを再発することがなく、また目立った副作用も認められなかったという。この研究結果は、欧州泌尿器科学会(EAU 2024、4月5~8日、フランス・パリ)で発表された。

UTIは最も一般的な細菌感染症で、女性の半数、男性の5人に1人が生涯に一度は経験するとされる。UTI症例の20~30%では、抗菌薬による治療を必要とするUTIが再発する。

Yang氏は、「ワクチン接種前は、全参加者が再発性UTIに苦しんでいた。また、多くの女性患者で再発性UTIは治療困難となり得る」とニュースリリースの中で述べている。そして、「この新たなUTIワクチンを初めて接種してから9年後の時点まで、参加者のほぼ半数は感染することはなかった」と説明。また、「全体として、このワクチンは長期にわたって安全であり、参加者はUTIの再発が減少したこと、再発した場合でも重症度が低く、多くは水をたくさん飲むだけで治ったと話していた」と振り返っている。

このMV140と呼ばれるワクチンは、4種類の細菌種を含んだパイナップル風味の懸濁液で、スペインの製薬会社であるImmunotek社によって開発された。ワクチンには、感染と闘う抗体の産生を促す細菌が含まれている。ワクチンは3カ月間、毎日舌の下に2回吹きかけて投与する。

今回の研究は、英国のロイヤルバークシャー病院でUTIの治療を受けた18歳以上の女性72人と男性17人を対象としたもの。これらの患者は、MV140の臨床試験への当初からの参加者で、ワクチン投与後1年間の追跡調査の結果は2017年に報告されていた。今回の報告は、その後の9年に及ぶ追跡調査の結果である。Yang氏らは、89人の医療記録データを分析するとともに聞き取り調査を実施した。

その結果、48人の参加者が、9年間の追跡期間中にUTIを再発しなかったことが明らかになった。再発が認められなかった期間は、女性で平均54.7カ月(4年半)、男性で平均44.3カ月(3年半)だった。なお、参加者の約40%は、1年後または2年後にMV140の再接種を受けたことを報告していた。

今回の研究には関与していない専門家であるアルタ・ウロ泌尿器医療センター(スイス)教授のGernot Bonkat氏は、「これらは有望な結果だ。再発性UTIによってもたらされる経済的な負担は大きく、また、抗菌薬の過剰使用は抗菌薬耐性感染症の要因にもなり得る」と研究結果に期待を寄せる。

Bonkat氏は、「今後は、より複雑なUTIについての研究や、異なる患者のグループを対象とした研究の実施が必要だ。そこから得られる研究成果を通じて、このワクチンの使用方法を最適化できる」と話す。また同氏は、「現実的な視点を持つ必要はあるが、このワクチンはUTI予防において画期的な手段となる可能性や、従来の治療法に代わる安全で有効な治療法となる可能性を秘めている」と述べている。

なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。(HealthDay News 2024年4月8日)

https://www.healthday.com/health-news/infectious-disease/vaccine-by-mouth-could-replace-antibiotics-in-fighting-utis

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