
オシメルチニブ単剤療法で長期ベネフィットの関連因子を解明-京都府立医大ほか
「単剤療法」と「併用療法」の判断が課題に
京都府立医科大学は9月24日、EGFR(epidermal growth factor receptor:上皮成長因子受容体)遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する一次治療としてオシメルチニブ単剤療法を受けた患者において、長期的に良好な転帰(長期ベネフィット)と関連する臨床的特徴を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科呼吸器内科学石田真樹助教、山田忠明准教授、髙山浩一教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Thoracic Oncology」に掲載されている。

EGFR遺伝子変異は、非小細胞肺がんにおける重要な治療標的として知られている。オシメルチニブは、この遺伝子変異を標的とする第3世代のEGFRチロシンキナーゼ阻害薬であり、EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する標準的な一次治療として広く用いられている。
近年、オシメルチニブに化学療法を併用する治療や、アミバンタマブとラゼルチニブを併用する治療などの「治療強化」により、オシメルチニブ単剤よりも生存期間が延長することが示された。一方、併用療法では副作用が増え、通院・点滴などの治療負担も大きくなる。そのため、どのような患者で治療強化の必要性が高いのか、また、オシメルチニブ単剤療法でも長期ベネフィットが得られる患者にはどのような特徴があるのかを明らかにすることが重要となっている。
これまで、オシメルチニブの効果と関連する個々の臨床因子は報告されてきたが、長期ベネフィットを経験した患者の特徴を、多数例の実臨床データを用いて総合的に検討した研究は限られていた。
長期ベネフィットと関連する6つの治療前因子
今回の研究は、2018年9月から2022年3月までに、国内25施設でEGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する一次治療としてオシメルチニブ単剤療法を開始した患者を対象とした多施設共同後ろ向き観察研究で、登録された1,025例のうち、追跡期間および必要な臨床情報がそろった803例を解析の対象とした。治療開始後、病気が進行するか死亡するまでの期間(無増悪生存期間)が24か月以上、かつ治療開始後の生存期間(全生存期間)が 48 か月以上であることを「長期ベネフィット」と定義した。この定義を満たした患者は、解析対象となった803例のうち204例(25.4%)だった。
年齢や全身状態など、複数の患者背景の影響を考慮して解析した結果、長期ベネフィットと独立して関連する治療開始前の特徴として、①年齢75歳未満②全身状態が良好(ECOG performance status0~1)③血清アルブミン値3.5 g/dL以上④手術後の再発⑤EGFR遺伝子変異がエクソン19欠失変異⑥肝転移なしの6項目が明らかになった。
次に、これら6つの良好因子について、該当する1項目につき1点として合計0~6点の臨床スコアを作成し、0~2点、3~4点、5~6点の3群に分けて検討したところ、長期ベネフィットが得られた患者の割合はそれぞれ2.5%、19.0%、50.7%であり、臨床スコアが高い群ほど、無増悪生存期間および全生存期間が段階的に長くなった。
また、無増悪生存期間の中央値はそれぞれ7.2か月、16.8か月、30.5か月、全生存期間の中央値は12.7か月、35.9か月、68.3か月となり、臨床スコアが高い群ほど長い傾向が明確に認められた。75歳以上、IVB期、EGFR遺伝子L858R変異、脳転移または骨転移を有する患者など、一般に良好な予後が得られにくいと考えられるこれらの特徴を有する患者においても、良好因子を複数有する高スコア群では、比較的良好な長期転帰が認められた。このことは、一つの予後不良因子のみで長期転帰を評価するのではなく、複数の治療前情報を総合的に考慮する重要性を示している。
一方、今回の研究はオシメルチニブ単剤療法を受けた患者のみを対象としているため、このスコアから「単剤療法と併用療法(治療強化)のどちらを選ぶべきか」を判断することはできない。同スコアは治療法の選択を直接決定する予測モデルではなく、オシメルチニブ単剤療法で長期ベネフィットを経験した患者の臨床的特徴をまとめた探索的な指標であるといえる。
再現性の検証と最適な個別化治療の確立へ
今回の成果により、EGFR遺伝子変異陽性の進行・再発非小細胞肺がんに対する一次治療オシメルチニブ単剤療法で、長期ベネフィットを経験した患者の臨床的特徴が明らかになった。6つの因子はいずれも日常診療で容易に確認できるため、患者の長期予後を考える際の分かりやすい情報となる。治療選択では、治療効果だけでなく、副作用、通院頻度、点滴治療の負担、生活の質、患者の希望などを総合的に考える必要がある。
「今回得られた知見は、患者と治療方針を相談する際に、オシメルチニブ単剤療法を受けた患者で実際に認められた長期的な転帰について考えるための基礎情報になることが期待される。今後は、国内外の独立した患者集団で臨床スコアの再現性を検証するとともに、オシメルチニブ単剤療法と治療強化療法を直接比較する前向き研究などによって、どのような患者がオシメルチニブ単剤療法または治療強化療法から、より大きな利益を得られるのかを明らかにする必要がある。また、こうした研究を通じて、患者一人ひとりに適した治療選択の実現につながることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます)
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