日本の専門外来に2カットオフ法の血液検査を導入した効果を試算

東京都健康長寿医療センターは5月11日、アルツハイマー病の血液検査を日本の専門外来に導入した場合の医療費削減効果を初めて試算したと発表した。この研究は、同センター脳神経内科の栗原正典専門医長らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Prevention of Alzheimer’s Disease」に掲載されている。

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画像はリリースより

アルツハイマー病は脳内へのアミロイドβ(Aβ)やタウタンパク質の蓄積を特徴とし、認知症の原因として最も多く、高齢化に伴い社会的な課題となっている。近年登場したレカネマブやドナネマブなどの抗Aβ抗体薬を早期に投与することで、症状の進行を緩やかにすることが可能となったが、これらの薬剤を投与するには、事前に脳内のAβ蓄積を確認する必要がある。

現在、この確認にはアミロイドPETや脳脊髄液検査が用いられているが、PETは比較的高額であり、撮像施設を持たない地域では実施できないという均てん化の課題がある。また、脳脊髄液検査は身体的負担を伴うことに加え、日本においては脳脊髄液リン酸化タウ検査の約80%が入院で行われているという調査結果もあり、入院費を含めると医療費が比較的かさむのが実情である。

一方、近年は血液検査が脳脊髄液検査と同等の性能を示しつつあり、十分に高い閾値と低い閾値を設定して陽性・陰性を判定する「2カットオフ法」を用いることで、正確性の担保が提唱されている。

検査費用が100〜700米ドル程度までであれば医療費を削減可能

研究グループは、日本におけるアミロイドPETおよび入院での脳脊髄液検査の費用を推計した。これをもとに、欧米の大規模研究で報告された2カットオフ法使用時における「中間域(追加のPETや脳脊髄液検査による確認が必要となる層)」の割合と計算アプリを用いて、血液検査の費用を変化させた際、どの程度の医療費削減効果があるかを算出した。その結果、検査1項目あたり100〜700米ドル(約1万5,000〜10万5,000円)程度までであれば、医療費削減効果が得られることが示唆された。特に、血液検査1項目あたり100米ドル(約1万5,000円)の場合、PETおよび脳脊髄液検査のいずれに対しても、1項目測定および2項目測定の双方で70%以上という極めて高い削減効果が認められた。また、1項目あたり200米ドル(約3万円)とした場合でも、脳脊髄液検査に対する2項目測定の削減率はやや低下するものの、引き続き高い医療費削減効果が示された。

中間域を減らす2項目測定の有用性を医療経済的な側面からも支持

血液検査において2項目を測定することは、1項目だけの場合よりも確定診断に追加検査が必要な中間域の割合を減らせる可能性が近年の研究で示されている。今回の試算では、2項目の測定に2倍の費用がかかると仮定した場合でも、1項目あたり100〜200米ドル(約1万5,000〜3万円)までであれば、1項目測定と同等に高い医療費削減効果が得られることが判明した 。最近の日本の多施設共同研究における血液検査の性能や中間域の割合の違いを用いても同様の傾向が確認されており、正確な評価を目的とした2項目測定の意義が、医療費の面からも強く支持される形となった。

「今回の研究により、アルツハイマー病血液検査の実用化は、患者や医療従事者にとっての負担軽減や医療の均てん化だけでなく、医療費削減効果もある可能性が示唆された。また、より中間域の少ない正確な評価のため2項目測定する意義についても医療費の面でも支持された。今後は、抗Aβ抗体薬専門外来よりも広い対象者に検査が広まった場合など、異なる条件での試算も行われていくことが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

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