移動手段として定期的に自転車に乗ることは、あらゆる原因による認知症(以下、認知症)リスクの低下と関連することが新たな研究で明らかになった。自転車の利用は、記憶に関わる脳領域である海馬の体積が有意に大きいこととも関連していたという。華中科技大学(中国)同済医学院のLiangkai Chen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に6月9日掲載された。

Chen氏らは、2006年3月13日から2010年10月1日までの間に収集されたUKバイオバンクのデータを用いて、移動手段と認知症リスクや脳構造との関連を検討した。対象者の総計は47万9,723人で、平均年齢は56.5歳、女性が54.4%を占めていた。参加者の移動手段は、「通勤・通学を除き、過去4週間において最もよく利用した移動手段は何ですか」という質問により調査されていた。その回答に基づき、1)車や公共交通機関などの非活動的移動手段を利用、2)徒歩、3)徒歩と非活動的な移動手段を併用、4)自転車単独および自転車と他の移動手段を併用、の4群に分類された。主要評価項目は、認知症の発症(若年性認知症と遅発性認知症を含む)、副次評価項目は、アルツハイマー病などの認知症のサブタイプや、MRIで評価された脳構造などであった。

中央値13.1年の追跡期間中に8,845人(1.8%)が認知症を発症しており、このうち3,956人(0.8%)がアルツハイマー病だった。解析の結果、自転車単独および自転車と他の移動手段を併用していた群では非活動的移動手段を利用していた群と比べて認知症リスクが19%(調整ハザード比0.81、95%信頼区間0.73〜0.91)、アルツハイマー病リスクが22%(同0.78、0.66〜0.92)、有意に低下していた。一方、徒歩で移動していた群ではアルツハイマー病リスクがわずかに上昇していた(同1.14、1.01〜1.29)。

研究グループは、「この結果は、活動的な移動手段、特に自転車の利用の促進が中高年の認知症リスクの低下につながる可能性があることを示唆している。認知機能の維持のために利用しやすく持続も容易な習慣を奨励することで、公衆衛生に大きなベネフィットがもたらされる可能性がある」と述べている。

ただし、自転車利用と認知症リスクの関連には、遺伝的素因(APOE ε4)保有の有無が影響することも示された。具体的には、自転車単独および自転車と他の移動手段を併用していた群の中でAPOE ε4を持たない人では認知症リスクが26%、遅発性認知症リスクが25%有意に低下していたが、APOE ε4を持つ人では、リスク低下は統計的に有意ではなかった。

さらに、脳のMRIスキャンデータが利用可能だった4万4,801人を対象に、移動手段と脳構造との関連を調べた結果、自転車の利用は海馬の体積が大きいことと関連していることが明らかになった。このほか、興味深いことに、車の運転は公共交通機関の利用と比べて、認知症に対してある程度の予防効果があることも示唆された。

本研究をレビューした米ノースウェル・ヘルス老年医療サービス部長のLiron Sinvani氏は、「自転車に乗ることは中等度から高強度の運動であり、バランス感覚も必要だ。ウォーキングよりも複雑な脳機能を必要とするため、認知症リスクの低減効果が高いと考えられる」と述べている。同氏はさらに、「単に、運動を習慣化すればいいわけではなく、どう生活するかを考えることが大切だ。つまり、どこかへ出かける際には車ではなく自転車を使うというように、活動的な移動手段をライフスタイルの一部として取り入れることが非常に重要になる」と述べている。

ただしこの研究は観察研究であり、自転車の利用と健康的な脳の老化の因果関係が明らかにされたわけではない。それでもSinvani氏は、「認知症のリスクを減らすための方法について患者や家族、友人から尋ねられるたびに、私は、『外に出て何かをするべきだ』と伝えている。身体活動だけでなく、バランス感覚を維持し、脳のさまざまな部分を活性化させることが大切だ」と話している。(HealthDay News 2025年6月11日)

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