アルツハイマー病などで見られるタウオパチー、タウの凝集・蓄積の仕組みは不明

東京都立大学は4月22日、酵素MARK4を欠損したマウスでは、タウの凝集が減少することを発見したと発表した。この研究は、同大大学院理学研究科生命科学専攻のGrigorii Sultanakhmetov大学院生(当時)、斎藤太郎助教、Adam Weitemier准教授、安藤香奈絵准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Brain Communications」に掲載されている。

画像はリリースより

日本を含む多くの国が高齢化社会を迎え、アルツハイマー病など加齢に伴う神経変性疾患の発症率が増加している。これらの神経変性疾患では、脳の機能を担っている神経細胞が次第に死んでいくため、記憶障害や生活機能障害が引き起こされる。また、その特徴的な病変として、脳の神経細胞の中にタンパク質タウが凝集して沈着している現象が見られる(タウオパチー新規ウィンドウを開きます)。異常に凝集したタウの量は疾患の進行に伴って増加し、この凝集したタウは神経毒性を持つことがわかっている。そのため、タウの蓄積の抑制は、タウオパチーを伴う認知症の治療戦略として検討されているが、どのようにタウの凝集と蓄積が起きるのかははっきりとわかっていない。

発症過程で起きるタウの変化の一つに、過剰なリン酸化がある。タウは多くの部位で、さまざまな酵素によってリン酸化を受けるが、中でもMARK4(Microtubule affinity regulating kinase 4)は、タウ病変と共局在し、疾患脳で活性が増加していることや、その変異がアルツハイマー病のリスクを増加させる。このことなどから、アルツハイマー病でのタウ病変に関与するのではないかと考えられてきた。また、ショウジョウバエを使った実験では、MARK4活性が増加すると、タウによる神経細胞死が悪化することが報告されていた。

MARK4とタウ病変の関係をタウオパチーマウスで解析

そこで今回の研究では、ヒトと同じ哺乳類であるマウスで、MARK4とタウ病変の関係を調べた。ヒトで神経変性疾患の原因となる変異を持つタウを神経細胞に発現したマウスでは、認知機能が低下し、寿命が短縮する。また、脳の神経細胞では、タウの凝集、リン酸化タウの蓄積が見られ、神経細胞同士のコネクション(シナプス)が失われるのが観察される。このタウオパチーマウスを、MARK4をコードする遺伝子Mark4を欠損したマウスと掛け合わせ、MARK4の有無でタウオパチーマウスの症状が変化するかを、行動、生化学的、組織学的解析で調べた。

Mark4欠損のタウオパチーマウスは死亡率・認知機能が改善、タウ凝集が起きにくい

研究の結果、Mark4欠損マウスでは、Mark4遺伝子を持つマウスと比べて、死亡率と認知機能が改善していることがわかった。脳を生化学的に調べると、Mark4遺伝子欠損マウスではリン酸化タウが減少し、また、凝集したタウを標識するチオフラビンSのシグナルが低下していた。Mark4遺伝子欠損マウスの神経細胞は、タウを発現させてもより多くのシナプスを維持していた。

Mark4欠損マウス脳では老化によるアストロサイト活性化も抑制

タウの発現によって、脳の免疫細胞であるグリアが活性化し炎症を起こす。Mark4遺伝子欠損マウスでは、グリアの一種アストロサイトの活性化が抑制されていた。アストロサイトの活性化は加齢によっても起きるが、Mark4遺伝子欠損マウスの脳では、老化によるアストロサイトの活性化も抑制されていた。

Mark4欠損マウスは正常に発育、甚大な副作用は起きないことを示唆

これらの結果から、MARK4がタウオパチーの発症機構に寄与していることが明らかになり、またMARK4の阻害がタウオパチーを伴う認知症の治療戦略となる可能性が示された。Mark4遺伝子欠損マウスは正常に発育していたため、その阻害によって甚大な副作用は起きないことが示唆される。MARK4を阻害する薬剤の開発により、アルツハイマー病やその他のタウ病変を伴う疾患の、根本的な治療薬の開発が期待される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

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