乳がん患者への新型コロナワクチン、接種効果や治療計画に与える影響は?

名古屋市立大学は8月12日、日本人乳がん患者への新型コロナワクチン接種について、がん治療による影響、変異株での効果の違い、治療計画に与える影響を明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院乳腺外科学分野の寺田満雄氏、近藤直人氏、鰐渕友美氏、藤田崇史氏、浅野倫子氏、久田知可氏、上本康明氏、加藤明子氏、山中菜摘氏、遠山竜也氏、同大医学部附属西部医療センターの杉浦博士氏、同大医学部附属東部医療センターの三田圭子氏、札幌医科大学消化器・総合、乳腺・内分泌外科学講座の和田朝香氏、秋田大学乳腺・内分泌外科の高橋絵梨子氏、三重大学腫瘍内科の齊藤佳奈子氏、岡山大学呼吸器・乳腺内分泌外科の吉岡遼氏らの研究グループによるもの。研究成果は「Breast Cancer Research and Treatment」に掲載されている。

画像はリリースより

新型コロナウイルス感染症の流行禍では、易感染者であるがん患者へのSARS-CoV-2ワクチン(以下、新型コロナワクチン)接種が推奨されている。しかし、その効果のがん治療による影響、変異株での効果の違い、新型コロナワクチン接種の治療計画に与える影響は明らかではなかった。今回の研究では、これらを明らかにするために国内の7施設で多施設共同観察研究を行った。

がん治療別の抗体陽転化率と中和抗体価、治療への影響を解析

研究グループは、2021年5月から11月に新型コロナワクチンを接種予定の乳がん患者を対象とし、ワクチン接種前および2回目接種後4週で血清を採取した。受けている治療別に無治療・ホルモン療法・抗HER2療法・化学療法・CDK4/6阻害薬のグループにわけて解析を行った。SARS-CoV-2のS蛋白に対するIgG濃度およびSARS-CoV-2野生株・アルファ(α)・デルタ(δ)・カッパ(κ)・オミクロン(ο)株に対する中和抗体価をELISA法で測定した。各治療グループ別の抗体陽転化率および各変異株に対する中和抗体価を比較した。また、新型コロナワクチン接種による乳がん治療への影響を前向きに聴取した。

2回接種で抗体陽転化率95.3%、化学療法やCDK4/6阻害薬治療は中和抗体価が有意に低い

今回の研究において、適格症例は85例(無治療群;n=5、ホルモン療法群;n=30、抗HER2療法群;n=15、化学療法群;n=21、CDK4/6阻害薬群;n=15)、年齢中央値は62.5歳だった。新型コロナワクチン2回接種後、全体の抗体陽転化率は95.3%、中でも化学療法群の抗体陽転化率は81.8%であり、これは、乳がんの病状とは関連がなかった。さらに、化学療法群では抗SARS-CoV-2のIgG抗体濃度が、無治療群と比較して有意に低かったことに加え、野生株・α・δ・κ株に対する中和抗体価が、無治療群に比較して有意に低下していることがわかった。CDK4/6阻害薬群においても、野生株で有意な中和抗体価の低下を認め、その他の変異株でも低下傾向だった。また、新型コロナワクチン接種による計画的な薬剤休薬や延期は1例のみで、新型コロナワクチンの副反応による休薬や延期はなかった。

ワクチン接種は有効だが、接種後の感染予防行動は必要

今回の研究によって、乳がん患者におけるSARS-CoV-2ワクチン接種後の抗体陽転率は過去の健常者データと同等であり、ワクチン接種によるがん治療への影響も小さいことがわかった。一方で、化学療法とCDK4/6阻害薬投与中では変異株によっては中和抗体価の低下が示唆され、長期的な感染予防への影響が懸念された。これは、2回のワクチン接種後であっても感染予防のための行動が大切であることが示唆されたという。「今回の研究では、なぜ化学療法やCDK4/6阻害薬投与中でこのようなことが起こるかまでわかっていない。薬物治療中の免疫状態についてはまだまだわかっていないことが多く、今後の検討課題である」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

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