
血清IgA高値でメタボ由来の脂肪肝による肝がん等の合併症を予測-信州大ほか
MASLDにおける将来の肝関連イベント予測の課題
信州大学は7月30日、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)において、血清IgA高値を特徴とする新たな高リスク病型を同定したと発表した。この研究は、同大医学部内科学第二教室の木村岳史氏、若林俊一氏、同大医学部国際医学研究推進学教室の田中直樹氏、大垣市民病院、岐阜協立大学、大分大学などとの共同研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Hepatology」にオンライン掲載されている。

MASLDは、肥満や2型糖尿病などの代謝異常を背景に肝臓へ脂肪が蓄積する疾患であり、慢性肝疾患の主要な原因となっている。病気が進行すると、肝硬変や肝がん、腹水、静脈瘤などを生じることがある。
これまで、肝線維化の程度が将来の肝関連イベントを予測する最も重要な指標と考えられてきた。しかし、同じ線維化段階でも経過が異なる患者が存在しており、線維化以外の免疫・代謝・腸管由来因子を含む病態の多様性を捉える必要があった。
機械学習と空間解析でIgA高値を特徴とする高リスク群を同定
今回の研究では、先入観を持たずに患者を分類する機械学習と、組織内の遺伝子発現位置を調べる空間トランスクリプトミクスを統合し、高リスク病型とその生物学的背景を検討した。まず、肝生検でMASLDと診断された349例を対象に、51項目の臨床・血液検査データを用いて変分ベイズガウス混合モデルによる教師なしクラスタリングを実施し、データの特徴のみから4群を抽出した。その結果、血清IgAとヒアルロン酸が高く血小板が低い群(72例)では、追跡期間中央値6.8年の間に20件の肝関連イベントが発生し、5年累積発生率は24.0%に達した。
さらに、血清IgAの最適カットオフ値を318mg/dLとした場合、進行肝線維化を同時に含めた多変量解析でも、IgA高値は独立した予測因子であることが判明した(ハザード比 3.17、95%信頼区間 1.27-7.91)。IgA高値と進行肝線維化の両方を有する患者では、10年累積発生率が48%に達した。この関連は、外部多施設コホート272例などでも確認された。また、空間トランスクリプトミクスなどの解析により、IgAを産生するB細胞系細胞が肝臓の門脈域に集積していることも明らかになった。
血清IgAの測定による精密なリスク評価の実現へ
腸粘膜のIgA陽性細胞増加と腸管透過性指標の解析結果から、腸管バリア機能の変化を起点とする「腸-肝軸」の免疫活性化が、MASLD進展に関与する可能性が示された。今後、IgAを介した免疫連関を標的とする新たな治療法の開発なども期待される。
「本結果は、一般診療で測定可能な血清IgAを、従来の線維化評価に加えることで、MASLD患者のリスク評価をより精密にできる可能性を示すものだ」と、共同研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます)
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