
がんゲノム検査で検出される意義不明バリアントの判定を効率化する仕組み構築-広島大
臨床的意義が明らかでないバリアントが臨床応用面で課題に
広島大学は7月1日、がんゲノム検査で多数検出される、がんとの関わりが明確でない遺伝子変化「意義不明バリアント(VUS)」に対して、コンピュータ解析を行った結果、診断や治療に重要な候補を優先的に見つけ出す仕組みを構築したと発表した。この研究は、同大病院遺伝子診療科の中原輝特任学術研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Journal of Human Genetics(Q1)」に掲載されている。

近年、包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)の普及により、がんのゲノム異常を網羅的に解析することが可能となり、さまざまながん種において遺伝子バリアントをはじめとしたゲノム異常に基づく治療選択が行われるようになっている。一方で、検出されるバリアントの多くはVUSであり、その臨床的意義が明らかでなく、その解釈や臨床応用の面で、大きな課題となっている。VUSは原則として、病的バリアントとは扱われないものの、実際には遺伝子の機能に影響を及ぼす変異が含まれている可能性を有している。
BRCA1/2は、プラチナ製剤やPARP阻害剤といった有効な治療薬の選択に直結する重要な遺伝子であるとともに、遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)の原因遺伝子でもあり、その病原性の評価は、治療方針の決定や、遺伝性腫瘍症候群の診断・血縁者解析に重要となっている。CGPの普及により、HBOC関連腫瘍だけでなく、HBOC非関連腫瘍からも多くのBRCA1/2バリアントが検出される一方、VUSも多数検出され、この病原性の解釈は臨床上の課題と言える。
こうした背景から、研究グループではBRCA1/2遺伝子に着目し、VUSの中から臨床的意義を持つ可能性の高いバリアントを効率的に抽出し、実験的機能解析につなげる枠組みの構築に取り組んだ。
コンピュータ解析を実施、臨床的に重要な候補を優先的に見つけ出す仕組みを構築
今回の研究では、同大病院および関連12施設において実施された2,172例のCGPデータを解析した。その結果、BRCA1/2遺伝子において526個のバリアントが同定され、そのうち153個がVUSだった。これは、VUSが病原性変異の約3倍多く検出されることを示しており、臨床解釈の課題の大きさが明らかになった。
研究グループでは、これらのVUSに対して、10種類のコンピュータによる病原性予測(in silico解析)ツールを用いた統合評価を行い、機能的影響を持つ可能性のあるバリアントを優先的に抽出し、大規模網羅的解析との照合や新規の実験的機能解析の優先順位をつける枠組みを構築した。
この枠組みの有用性検証のため、BRCA2のスプライシング異常が予測されたバリアントに着目。実際に機能解析を実施したところ、in silico解析の予測通りのスプライシング異常が確認された。
このバリアントを保有する2症例では、いずれもプラチナ系抗がん剤ないしはPARP阻害薬に高い治療効果が確認され、VUS再評価の枠組みが実際の治療につながる例と考えられる。
治療選択肢の拡大、遺伝性腫瘍に対する適切なサーベイランス実施に期待
同手法は、VUSの病原性を直接判定するものではないものの、今後の機能解析や臨床検証の対象として優先順位を付けるVUS解析の再解析・再評価が進むことが期待される。
「研究で構築したVUS再評価へ向けた枠組みが、他の遺伝性腫瘍症候群や遺伝性疾患に応用可能か検討を進める予定。また、in silico解析を日常のがんゲノム診療に組み込み、VUSの解釈精度向上に向けた取り組みを、広島大学病院を中心に継続していく。将来的には、VUSの臨床的意義が明確になることで、治療選択肢の拡大や、遺伝性腫瘍に対する適切なサーベイランスおよび遺伝カウンセリングの実施につながることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)
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