
低温環境がマウスにおけるマラリア原虫の赤血球侵入阻害し増殖を抑制-慈恵大
世界3大感染症「マラリア」の増殖を低温環境が抑えると発表
東京慈恵会医科大学は5月28日、低温環境がマラリア原虫の遺伝子の働きを弱め、赤血球に侵入する効率を低下させた結果、原虫の増殖が抑えられることなどを明らかにしたと発表した。この研究は、同大小田川太一助教と嘉糠洋陸教授らの研究グループによるもの。研究成果は「Parasitology International」に掲載されている。
マラリアは蚊(ハマダラカ)に刺されることでヒトの体内に原虫という小さな寄生虫が入り込んで感染する重大な感染症で、年間2億人以上が感染、60万人以上が死亡しており世界3大感染症の一つとされている。高熱や頭痛、貧血などのほか、特に熱帯熱マラリア原虫は、脳マラリアなどの重篤な症状を引き起こすことが知られている。
低温環境が赤血球侵入を阻害し増殖を抑制、抗マラリア薬との相乗効果も

これまで、宿主の発熱といった高温環境が原虫に与える影響については研究がされていたが、低温環境の影響については十分に解明されていなかった。今回の研究では、ヒトマラリア原虫の培養系およびマウスを用いたマラリア感染モデルによって、低温環境がマラリア原虫に与える影響を解析した。
その結果、低温環境下では原虫の赤血球侵入効率が著しく低下し、それに伴い原虫増殖が抑制されることを明らかにした。加えて、RNA-seq解析により、低温ストレスに曝露されたマラリア原虫では、赤血球への侵入に関連する遺伝子の発現が低下することが明らかとなった。
さらに、低温環境と抗マラリア薬アーテスネートを組み合わせることで、単独処理よりも強い増殖抑制効果が認められた。
新たなマラリア制御戦略の確立や、低体温療法の応用への期待
これらの成果は、温度という宿主環境因子がマラリア原虫の病原性を制御しうることを示しており、宿主環境を標的とする新たなマラリア制御戦略につながる可能性がある。
「今回の研究成果を基盤に、低体温療法の重症マラリアに対する補助療法としての応用可能性を検討する。今後は、低温環境が脳マラリアなどの重症症状や病態進行に与える影響の解明を目指す」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます)
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