分子標的薬の重要性と、既存の「マルチ遺伝子検査」における課題

東京大学は3月20日、日本全国の肺がん患者の臨床情報・がん遺伝子情報を用い、がん遺伝子パネル検査を受けた3,470名の肺がん患者の臨床情報から、個々の肺がん患者が肺がんの分子標的治療薬の対象となる遺伝子異常を有する確率を推定する機械学習モデルを開発し、Webアプリケーションとして実装・公開したと発表した。

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画像はリリースより

肺がん治療において、旧来の細胞障害性抗がん剤に比べて副作用が少ない分子標的治療薬が多く用いられるようになってきた。分子標的治療薬は、特定の遺伝子の異常があるがんにしか効果を発揮しないことが知られており、使用にあたっては、遺伝子異常の有無を検査する必要がある。研究グループは、がんと診断した時に行うマルチ遺伝子検査では偽陰性となることがあり、分子標的治療薬を投与できる機会を見逃す恐れがあることから、がんに関連する多数の遺伝子異常の有無をさらに詳細に調べることができるがん遺伝子パネル検査を行う重要性を示してきた。しかし、がん遺伝子パネル検査は、高価、時間がかかる、質の高い検体を準備する必要がある、などの理由で、実施が躊躇される場面も多い。

高い予測精度を実証、誰でも使えるツールとして公開

研究グループは、2019年6月~2023年11月の間にがん遺伝子パネル検査を受けた3,470名の肺がん患者の臨床情報を用い、分子標的治療薬が有効な遺伝子異常ががん遺伝子パネル検査で見つかる可能性を推定する機械学習モデルの構築・学習を行った。臨床情報のみをもとに簡便に推定することができる初めての予測モデルとなる。臨床情報・ゲノム情報は、日本全国のがん患者さんの臨床情報・がんゲノム情報を収集した国立がん研究センターがんゲノム情報管理センターのデータを用いた。

この予測モデルの精度を、独立した患者集団(2023年12月~2024年11月の間にがん遺伝子パネル検査を受けた1,307名の肺がん患者)のデータを用いて検証した。確率予測の精度を評価するための指標であるBrierスコアを用いて評価したところ、良好な精度を示した。開発した予測モデルは、広く一般に使用可能な形でWeb上に公開した。

「この予測モデルの結果を活用し、分子標的治療薬が有効な遺伝子異常が見つかる可能性の高い患者に対するがん遺伝子パネル検査の実施を促進することによって、分子標的治療薬を投与できる機会を見逃すことが減り、分子標的治療薬を用いたより副作用が少なく効果の高い医療を患者に提供できる機会が増えることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

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