開発段階の経口PCSK9阻害薬enlicitideにより、「悪玉」コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロール(LDL-C)値を大幅に下げられることが、新たな臨床試験により明らかにされた。アテローム動脈硬化性心血管イベント(以下、動脈硬化性心血管イベント)の既往またはリスクのある人がenlicitideを毎日服用したところ、LDL-C値が平均約60%低下したという。

Enlicitideの開発元であるメルク社の資金提供を受けて米テキサス大学(UT)サウスウェスタン医療センターのAnn Marie Navar氏らが実施したこの試験の詳細は、「The New England Journal of Medicine(NEJM)」に2月4日掲載された。Navar氏は、「これほどのLDL-C値の低下を経口薬で達成できたのは、スタチンが開発されて以来、間違いなく初めてのことだ」と述べている。

米食品医薬品局(FDA)は現在、enlicitideを審査中である。今回の試験の結果は、FDAの判断に影響する見込みだ。PCSK9は、主に肝臓や腎臓などで発現しているタンパク質で、LDL受容体に結合してその分解を促進し、血中LDL-C濃度を上昇させる。Enlicitideは、PCSK9の働きを阻害することでLDL-C値を低下させる。

今回の研究では、動脈硬化性心血管イベントの既往がありLDL-C値が55mg/dL以上、または初発の動脈硬化性心血管イベントリスクがありLDL-C値が70mg/dL以上の2,909人(平均年齢62.8±10.7歳、男性60.7%、平均LDL-C値96.1±38.9mg/dL)を対象に、enlicitideの有効性が検討された。対象者は、52週間にわたりenlicitide(20mg)またはプラセボを使用する群に2対1の割合でランダムに割り付けられた。最終的に薬を使用しなかった5人を除外した、enlicitide群1,935人とプラセボ群969人が解析対象とされた。

その結果、24週目のLDL-C値の平均変化率(%)は、enlicitide群で−57.1%(95%信頼区間−61.8〜−52.5)、プラセボ群で3%(同0.9〜5.1)であり、調整後の群間差は−55.8%(P<0.001)と推定された。また、52週目でもenlicitide群でのLDL-C値の低下は有意であり、さらに、24週目のHDL-C以外のコレステロールやアポリポ蛋白Bの値もプラセボ群と比べて有意に良好であった。安全性に関しても良好で、重大な副作用は報告されなかった。

Navar氏は、「動脈硬化性心血管疾患患者のうち、LDL-C値が目標値に達するのは半数にも満たないのが現状だ。これほど効果の高い経口薬は、心筋梗塞や脳卒中の予防能力を人口レベルで劇的に向上させる可能性がある」と期待を示している。

なお、研究グループによると、enlicitideによるLDL-C値の低下が、実際に心筋梗塞や脳卒中の減少につながるかどうかを検証するための別の臨床試験も、現在進行中とのことだ。(HealthDay News 2026年2月9日)

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