マリア・ブラニャス・モレラ(Maria Branyas Morera)さんは、2024年8月19日に117歳で亡くなった当時、世界最高齢者であった。彼女は一つの情熱的な願いを抱いてこの世を去った。バルセロナ大学(スペイン)医学部遺伝学科長のManel Esteller氏は、「ブラニャスさんはわれわれに、『私を研究してください。そうすれば他の人を助けることができます』と言った。彼女のその希望は現実となった」と話す。Esteller氏らがブラニャスさんについて包括的な分析を行った結果、ブラニャスさんには、健康的なライフスタイル、微生物叢内の有益なバクテリア、長寿に関連する遺伝子など多くの利点があったことが判明した。この研究の詳細は、「Cell Reports Medicine」に9月24日掲載された。

Esteller氏は、「健康的な老化は、何か一つの大きな特徴が関与するのではなく、むしろ、多くの小さな要因が相乗的に作用する、非常に個人差のあるプロセスであることが分かった。不健康な老化ではなく、健康的な老化につながる特徴をこれほど明確に示すことができたことは、将来、老若男女を問わず全ての人にとって有益になると思われる」と述べている。

ブラニャスさんは、1907年3月4日に米サンフランシスコで生まれ、8歳のときにスペインに移住した。彼女は2つの世界大戦、スペイン内戦、そして、スペイン風邪と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2つのパンデミックを生き延びた。事実、ブラニャスさんは113歳のときにCOVID-19に罹患したが、完全回復した。

研究グループは、ブラニャスさんの健康と長寿は、彼女のライフスタイルによるところが大きいと話す。彼女は地中海式ダイエットを実践し、脂肪や加工糖を過剰に摂取しないよう気を付けていたし、タバコやアルコールも一切摂取しなかった。高齢で歩行が困難になるまでは、定期的にウォーキングも行っていた。

血液サンプルの解析からは、極端に短いテロメアや炎症傾向の強い免疫系、高齢化したBリンパ球の集団など、明確な老化の兆候が見られた。一方で、ゲノム解析の結果、ブラニャスさんには他のヨーロッパ人には見られないまれな遺伝子変異が存在することが明らかになった。これらの変異は、免疫機能、認知機能、心機能、神経保護、脂質代謝などの経路に関与しており、これがブラニャスさんの高コレステロール、心臓病、がん、認知症などのリスクを低下させた可能性がある。

また、ブラニャスさんの腸内細菌叢には、抗炎症作用を持つ有益なビフィズス菌が豊富に含まれていたことも判明した。炎症は老化を促進する要因の一つである。研究グループによると、ブラニャスさんは、食生活の一環としてヨーグルトを多く摂取していたという。さらに、エピジェネティック解析によって測定されたブラニャスさんの生物学的年齢は実年齢よりも大幅に若いことも明らかになった。

Esteller氏は、「われわれの研究結果は、多くの高齢者がより長く、より健康的な生活を送る上で有益となり得る要因を特定するのに役立つ。例えば、健康長寿に関連する特定の遺伝子が判明したことから、これらが医薬品開発の新たなターゲットとなる可能性がある」と述べている。

ただし、本研究には関与していない米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のImmaculata De Vivo氏は、「1人の人間の人生から確かな結論を導き出すのはほぼ不可能だ。大規模でよく管理された集団研究とは対照的に、個々の症例の結果を解釈する際には、常に注意することが重要だ」と述べ、慎重な解釈を求めている。同氏は、「遺伝子やライフスタイルは健康に役立つかもしれないが、病気の原因は一般的に絶対的なものではなく確率の問題だ」と指摘し、ブラニャスさんと同程度に長生きするには、ある程度の幸運も必要なことをほのめかしている。(HealthDay News 2025年9月26日)

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Photo Credit: Provided by Manel Esteller

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