がん化を抑制すると考えられているARID1A、その機能やメカニズムの詳細は未解明

東北大学は4月2日、クロマチンリモデリング複合体におけるARID1Aの新たなタンパク質間相互作用のネットワークを明らかにし、ARID1AがDNA二重鎖切断修復に寄与する新規のメカニズムを見出したと発表した。この研究は、同大加齢医学研究所分子腫瘍学研究分野の菅野新一郎講師、小林孝安准教授、田中耕三教授、安井明学術研究員、宇井彩子准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nucleic Acids Research」に掲載されている。

画像はリリースより

多種多様ながんで高頻度に変異(卵巣がんで約50%、胃がんで約20%、膀胱がんで約20%、肝がんで15%など)しているARID1Aは、がん化を抑制していると考えられている。ARID1Aは、クロマチンの構造変化を促し転写やDNA複製・修復で機能するクロマチンリモデリング複合体「SWI/SNFファミリー」で機能するタンパク質だが、その細胞内での機能とがん化への影響には不明点が多々あり、がん化抑制機能のメカニズムはまだ完全に解明されていない。

ARID1Aと相互作用する新たな因子やARMドメイン結合に寄与する保存配列を明らかに

研究グループはARID1Aの新たなタンパク質間相互作用のネットワークを明らかにし、それらのタンパク質の中にARID1AのARMドメインの結合に寄与する保存されたアミノ酸配列(ARMドメイン結合配列)を見出した。ARMドメイン結合配列は、RNAの代謝、転写、ヒストン修飾、DNA修復など、さまざまな因子に保存されていた。

相互作用因子としてDNA二重鎖切断修復に関わるDNA-PKcsを発見

これらのARID1Aの相互作用因子の中で、DNA修復の中でもDNA二重鎖切断修復に関わるDNA-PKcsを発見した。DNA二重鎖切断によるDNA損傷は細胞にとって致死的であり、その修復異常はがんの特徴であるゲノム不安定性を引き起こし、高頻度にがんを引き起こすと考えられている。しかし、ARID1AとDNA-PKcsの相互作用の意義は不明だった。

DNA-PKcsとの相互作用介しNHEJ修復を制御、ゲノム安定性の維持に関わるメカニズムが判明

そこで研究グループはARMドメインと結合するアミノ酸に変異を導入して、ARID1Aと相互作用できないDNA-PKcsの変異細胞を作成した。その結果、DNA二重鎖切断修復の中で主要な仕組みの一つである、非相同末端結合(non homologous end joining:NHEJ新規ウィンドウを開きます)において、その経路の後期過程でDNA切断を再結合させるDNAライゲース(LIG4)のDNA切断部位への結合が低下し、NHEJ修復が遅延することが明らかになった。

この結果から、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体が、ARID1AとDNA-PKcsとの相互作用を通してNHEJの後期のステップを制御し、DNA二重鎖切断修復を効率的に進めることによりゲノム安定性の維持機構で重要な役割を果たすことが考えられた。DNA二重鎖切断修復のメカニズムの解明は、ゲノム安定性維持機構とそれによる細胞がん化の抑制のメカニズムの解明につながる。さらに今回の発見はARID1Aのゲノム安定性維持機構における新たながん抑制機能のメカニズム解明の発展にもつながると考えられる。

ゲノム安定性に関わる重要なメカニズム解明につながると期待

今回の結果から、ARID1AがNHEJの後期過程で重要な役割を果たす可能性が見出されたことから、ARID1Aの新規機能として細胞がん化の抑制に重要なゲノム安定性に関わるメカニズムが明らかになった。「DNA-PKcs以外のゲノム安定性に関わる因子とARID1Aについても新たな相互作用が見出されている。そこでさらにこれらの因子とARID1Aの相互作用の意義を明らかにすることにより、ARID1Aがゲノム安定性に関わる重要なメカニズム解明の発展につながることが期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

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