抗HPA-1a抗体による血小板輸血不応症を併発しているHPA-1b/1b型の患者対象

京都大学iPS細胞研究所(CiRA新規ウィンドウを開きます)は9月30日、血小板輸血不応症を合併した再生不良性貧血患者を対象に、iPS細胞由来血小板の自己輸血に関する臨床研究を実施し、予定していた投与を終了してから1年経過し、特に問題がないことが確認されたことを明らかにした。この研究は、同研究所臨床応用研究部門の江藤浩之教授、同大医学部附属病院血液内科の髙折晃史教授らの研究グループによるもの。研究成果は、米国血液学会等の発表を経て、「Blood」および「Blood Advances」に掲載されている。

画像はリリースより

再生不良性貧血などで血小板が不足すると、血小板の輸血が行われる。しかし、輸血後も血液中の血小板数が上昇しない、血小板輸血不応になる場合がある。その原因の一つに、輸血された血小板が異物として認識され、自身の免疫細胞が輸血された血小板を破壊することがある。このような場合、患者の型と適合する血小板製剤が必要となるが、まれな型の場合はそれが困難となる。患者自身の細胞から作製した血小板であれば、自身の免疫細胞に破壊されず輸血の効果が得られると期待できる。

研究グループは、再生不良性貧血で、かつ抗HPA-1a抗体による血小板輸血不応症を併発しているHPA-1b/1b型の患者の血液細胞から作製するiPS細胞を経由して誘導される血小板を、当該患者に投与してiPS細胞由来の血小板製剤の安全性について検証を行うことを目的に、臨床研究を計画した。

iPS細胞由来の巨核球を増殖させ、バイオリアクターや新規薬剤を用いて血小板を産生

患者から採取した血液細胞からiPS細胞を作製。その細胞から、巨核球細胞株を作り出し、品質が良く安全性に問題がない株を「マスターセル」として凍結保存した。このマスターセルを解凍し、培養液中で巨核球を増殖させた後、「乱流型」のバイオリアクターや新規薬剤を用いて血小板の産生を行った。血小板を分離・濃縮・洗浄した後、放射線照射により増殖できる細胞を根絶させた。

1症例に投与、輸血後1年間で有害事象なし、明らかな輸血後の血小板数の増加は認めず

この血小板製剤について、製造法とともに安全性、品質、有効性の検証を規制当局(PMDA)との戦略相談を行った上で、大学の特定認定再生医療等委員会および厚生労働省の了承(適合性確認)を経て、臨床試験を実施した。

試験デザインは、単施設非盲検非対照試験/単回投与用量漸増試験。1症例に投与し、iPS細胞由来の血小板製剤の輸血後1年間の安全性(有害事象の発生頻度と程度)および有効性(補正血小板増加数)を評価した。

その結果、安全性として臨床的に問題となる有害事象は観察されなかった。また、有効性については、3つの用量コホート(0.5単位(血小板1×1010個)、1.5単位(血小板3×1010個)、5単位(血小板1×1011個))を実施し、5単位の投与でも明らかな輸血後の血小板数の増加は認なかったが、iPS血小板と考えられるやや大型の血小板が血液中にあることがフローサイトメトリー解析法によって確認された。

適合する血小板ドナーが存在しない患者に対し、「拒絶されない血小板」製造が可能に

今回の研究により、適合する血小板ドナーが存在しない患者に対し、輸血可能な品質良好な自己のiPS血小板を十分量製造することに成功し、3つの用量投与を経て安全性が確認された。この成果により、将来必要となった場合に、「拒絶されない血小板」を製造できることが示された。

髙折晃史教授は「研究では、臨床的に問題となる有害事象は観察されなかった。研究にご協力いただいた患者さんをはじめ、関係者の皆様に改めて感謝している。今後も新たな治療法を開発してより多くの患者さんに役立てることを目指し、研究開発を進めていく」と、述べている。

また、江藤浩之教授は、「この臨床研究はiPS細胞から作製した血小板を輸血する初めての臨床研究だった。適合する血小板ドナーが存在しない患者さんであっても、拒絶されない血小板を製造できることが示され、嬉しく思う。引き続き、献血に依存しない輸血システムの実現を目指して、基礎研究・技術改良を推進していく」と、述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

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