HLA半合致移植のGVHD予防に糖質コルチコイドは有効か

兵庫医科大学は11月24日、白血病治療のHLA半合致移植において、移植前後の糖質コルチコイド(GC)投与が、移植片対宿主病新規ウィンドウを開きますGVHD新規ウィンドウを開きます)を抑制しつつ、高い抗腫瘍効果を維持する理論的根拠を示したことを発表した。この研究は、同大血液内科学の井上貴之助教らと、米フレッドハッチンソン癌研究所のGeoffrey R. Hill研究室との共同研究グループによるもの。研究成果は、「JCI Insight」に掲載されている。

同種造血幹細胞移植における本質的な治療効果は、ドナーとレシピエントのヒト白血球抗原(HLA新規ウィンドウを開きます)の違いに依存した、ドナー由来アロ抗原反応性リンパ球によってもたらされる。従来、HLAハプロタイプ不適合同種造血幹細胞移植(HLA半合致移植;haplo-SCT)は、免疫学的差異の大きさから致死的なGVHDを発症するため施行困難であったが、最近は移植後大量シクロフォスファミド投与(PT-Cy)によるT細胞除去を行うことで、比較的安全にHLA半合致移植が可能となり、急速に普及してきた。

一方、同大および大阪大学では、移植前後にGVHD予防としてメチルプレドニゾロンを併用した HLA半合致移植を開発し、安全に施行可能であることを確認してきた。臨床データの解析から、GVHDの発症頻度は低いにもかかわらず、治癒困難症例に対しても、十分な抗腫瘍効果(移植片対白血病:GVL)を認めた。また、同大において、GVHD予防としてGCを併用したhaplo-SCTを開発し、安全に施行可能であることを確認してきた。これらの臨床データをもとに、今回研究グループは、橋渡し研究としてMHC半合致マウス移植モデルを作製し、移植前後の糖質コルチコイド(GC)投与の役割を検討した。

デキサメタゾン投与群のマウスで腸管への浸潤低下、GVHDの有意な減少

MHC半合致マウス移植モデル(B6D2F1→B6C3F1、B6→B6D2F1)の系を用い、レシピエントマウスへ全身放射線照射後にドナー脾臓細胞またはCD3+T細胞(2×106)と骨髄細胞(5×106)を移植し、デキサメサゾン投与群(5mg/kg、Days -1 to +5)、非投与群におけるドナーT細胞の体内動態を解析した。その結果、GC投与群で腸間膜リンパ節内のドナーT細胞数は減少し、GVHD標的臓器(腸管)への浸潤低下と、GVHDの有意な減少を認めた。

Glucocorticoid receptor(GR)欠損T細胞を移植したところ、GRの有無に関わらず、ドナーCD4+T細胞数を著明に低下させ、同時にT細胞上のa4b7インテグリンの発現低下を認めた。また、GC投与下の腸管リンパ組織では、レシピエント由来樹状細胞、マクロファージによるアロ抗原提示能は、量、質ともに減少を認めた。以上から、GC投与は抗原提示能を低下させ、間接的にT細胞のprimimgを抑えることで、GVHD発症を抑制することがわかった。

モデルマウスでPT-Cy群と比較、GC投与群で著明な再発率の低下

次に、マウス急性骨髄性白血病(BCR/ABL-NUP98/HOXA9)移植モデル(CD3+T細胞;0.25×106)においてGVLを検討したところ、PT-Cy群では急速な白血病の再発を認め、40日までに全例白血病死を認めた。一方でGC投与群では、GC非投与群やPT-Cy群と比較し、著明な再発率の低下を認めた。GC投与群では、非投与群と比較し、骨髄内微小循環ドナーCD8+T細胞数の著明な増加とa4b1,CXCR4,S1PR1等のホーミング因子の発現レベル上昇を認めた。以上の結果から、移植前後のGC投与下で、アロ抗原反応性ドナーT細胞がGVHD発症に寄与せず、GVL効果を維持する理由として、GVHD標的臓器(腸管)から循環、骨髄系へのT細胞の生体内再分布が確認された。

GC併用HLA半合致移植群はPT-Cy法と比べ再発率低下と生存率改善、臨床データで

さらに、臨床データ解析から、急性骨髄性白血病の非寛解期症例において、PT-Cy法と比較し、GC併用HLA半合致移植では、有意な再発低下と生存率の改善を認めた(57.7% at 3 years for GC haplo-SCT vs 25.0% for PT-Cy haplo-SCT, p=0.040)。

今回の研究はHLA半合致移植において、現在普及しているPT-Cy法による免疫抑制に代わる新たな治療戦略として、T細胞除去を行わず、高い抗腫瘍効果を発揮する治療法としての理論的根拠を示したものである。今後、難治性血液悪性疾患に対する糖質コルチコイド併用HLA半合致移植(兵庫医科大学方式)とPT-Cy併用法のランダム化前向き比較臨床試験を計画だ。また、移植後骨髄中ドナーT細胞の解析から、糖質コルチコイドによる免疫細胞の骨髄への生着、生存に関わる免疫学的な分子メカニズムをさらに明らかにすることで、細胞移植治療の新しいコンセプトの提示を目指すという。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

関連記事

Medical meets Technologyでは会員登録(無料)いただいた方限定のコンテンツを配信しています。
ぜひ会員登録の上、ご利用ください。

記事を探す

注目キーワード

アルツハイマー病アミロイドβタウ血液バイオマーカー希少疾患さい帯血がん遺伝子検査リキッドバイオプシー尿路感染症AMR尿検査アトピー性皮膚炎TARC血液疾患

テーマ別記事

アルツハイマー治療を考える母親と赤ちゃん、そして血液疾患患者との命の絆「さい帯血」尿路感染症治療の現状と今後への期待日本人男性に発症するがん1位の前立腺がんアトピー性皮膚炎治療の最前線Withコロナ時代におけるウイルス検査の役割と新展開

人気記事ランキング

  1. 1

    帯状疱疹ワクチンに認知症発症の予防効果?

  2. 2

    血中CRP濃度が高いほど、がん罹患リスク「高」-国がん

  3. 3

    国内の認知症、約40%が生活習慣や健康状態の改善で予防できる可能性-東海大ほか

  4. 4

    新たな予測モデルでアルコール関連の肝障害をスクリーニング

  5. 5

    コーヒーやお茶は脳の健康を守る