「注目すべき変異株」ミュー株(B.1.621系統)の中和抗体に対する抵抗性は?

東京大学医科学研究所は11月4日、新型コロナウイルスの「注目すべき変異株」のひとつである「ミュー株(B.1.621系統)」が、新型コロナウイルスに感染した人、および、ワクチンを接種した人の血清に含まれる中和抗体に対して、きわめて高い抵抗性を示すことを明らかにしたと発表した。この研究は、同研究所附属感染症国際研究センターシステムウイルス学分野の佐藤准教授、瓜生慧也大学院生、木村出海大学院生(日本学術振興会特別研究員DC1)、京都大学大学院医学研究科内科学講座血液・腫瘍内科学の白川康太郎助教、高折晃史教授、千葉大学大学院医学研究院救急集中治療医学の中田孝明教授、千葉大学大学院医学研究院分子腫瘍学の金田篤志教授、東海大学医学部基礎医学系分子生命科学の中川草講師からなる研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan新規ウィンドウを開きます)」のによるもの。研究成果は「New England Journal of Medicine」オンライン版に掲載されている。

画像はリリースより

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2新規ウィンドウを開きます)は、2021年9月現在、全世界において2億人以上が感染し、450万人以上が死亡している。現在、世界中でワクチン接種が進んでいるが、2019年末に突如出現したこのウイルスについては不明な点が多く、感染病態の原理やウイルスの複製原理、免疫逃避と流行動態の関連についてはほとんど明らかになっていない。

新型コロナウイルスによる感染や新型コロナウイルスに対するワクチン接種の後、体内では、「中和抗体新規ウィンドウを開きます」が誘導される。ベータ株(B.1.351系統、南アフリカ由来)やガンマ株(P.1系統、ブラジル由来)などの新型コロナウイルスの「懸念される変異株(VOC:variant of concern)」については、中和抗体が働かない可能性が懸念され、世界中で研究が進められている。コロンビアを中心とした南米諸国で流行拡大する「ミュー株(B.1.621系統)」は、8月30日に世界保健機関(WHO)によって「注目すべき変異株」に認定された。

ミュー株、従来株に比べ、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍高い抵抗性

研究グループは、ミュー株のスパイクタンパク質を有する「シュードウイルス」と、従来株の新型コロナウイルスに感染した人の回復後の血清(13人分)、および、ファイザー・ビオンテック社製のワクチンを2度接種した人の血清(14人分)を用いた中和試験を行った。

その結果、ミュー株は、従来株に比して、感染者が持つ中和抗体に対して10.6倍、ワクチン(ファイザー・ビオンテック社製)接種者が持つ中和抗体に対して9.1倍というきわめて高い抵抗性を示した。これまでの研究から、「懸念される変異株」のひとつであるベータ株が最も中和抗体に対する抵抗性が高い変異株として知られていたが、研究により、ミュー株はベータ株よりも高い抵抗性を有する、既存の変異株の中でもっとも抵抗性の高い変異株であることが明らかとなった。

G2P-Japan、今後も新型コロナウイルスの変異の早期捕捉の研究を推進

ミュー株は、感染者およびワクチン接種者が保有する中和抗体に高い抵抗性を示すことが明らかとなった。しかし、これは「ワクチンが効かない」ことを短絡的に意味するものではないことに留意する必要がある。ワクチン接種の効果は、血液中に中和抗体を産生させることだけが目的ではない。ワクチンは、血液中への中和抗体の産生だけではなく、細胞性免疫や免疫の記憶を構築することにより、複合的に免疫力を獲得するために接種するものだ。中和抗体が充分な効果を発揮できないとしても、ワクチン接種による感染予防効果、重症化を防ぐ効果は、ミュー株に対しても充分に発揮されるものと考えられるという。

現在、G2P-Japanは、出現が続くさまざまな変異株の中和抗体への感受性や病原性についての研究に取り組んでいる。「G2P-Japanでは、今後も、新型コロナウイルスの変異(genotype)の早期捕捉と、その変異がヒトの免疫やウイルスの病原性・複製に与える影響(phenotype)を明らかにするための研究を推進する」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部新規ウィンドウを開きます

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